週刊 奥の院 8.17

今週のもっと奥まで〜 
■ 花房観音 『女坂』 講談社文庫 629円+税 
 前回に続いて“観音様”。また女性中心、男は添え物。京都の女子大を舞台にした京女の激情。しかし、あえて男女のシーンを。
 水絵は和歌山から進学。先輩・日菜子が性の手ほどき。水絵は東福寺で出会った郁也と……。

「私、今まで、男の人とつき合ったことがないんです」
 水絵はうつ向いた。
「そうなんだ――僕もそんなに経験がある方じゃないんだ。だからすごく今、緊張してる」
 水絵は顔をあげて、身を乗りだした。
「私もすごくドキドキしてる。でもね、郁也さんと、もっと近づきたいの。最初に会ったときから」
「水絵ちゃん」
 郁也が、水絵を抱きしめ、そのまま横たわらせた。唇を軽く合わせる。
「シャワー浴びてくる?」
「うん」
 そう言いながらも、しばらくふたりはそのまま抱き合っていた。男の硬く力強い身体に包まれて安心感を味わった――日菜子とは味わったことのない感覚に身を浸していた。
……
「部屋、寒くない?」
「大丈夫」
「おいで」
 と、呼ばれて、水絵はその隣にするりと滑り込んだ。どうしても身体が触れてしまう。
「水絵ちゃん、好きだ」
 郁也は手を伸ばし、水絵の身体を抱きしめる。
……

解説、井上章一
「京都の女と居との男では、値打ちがまったくちがう。京都以外の場所でありがたく思われるのは、まちがいなく女のほうである。京都の人としてあこがれられる度合いをくらべれば、男が女にかなうはずもない。......」


◇ うみふみ書店日記
 8月16日 金曜
 代休合わせて本日より3連休。妻と映画。遅れている「奥の院」に「もっと〜」。
 写真は、8.13(火)「神戸新聞」夕刊の「本屋の日記」。市さん。【海】閉店にも言及。