週刊 奥の院 7.27

今週のもっと奥まで〜
■ ロバート・ハリス 『WOMEN(ウイメン) ぼくが愛した女性たちの話』 晶文社 1500円+税 
 1948年横浜生まれ。71年から東南アジア放浪。オーストラリアで書店&画廊経営、国立テレビ局で日本映画の字幕担当。帰国後、ラジオDJ、作家。
 幼い頃から「女の都」のような環境で育ち、女性を愛し、女性に心開き、語り合い、友達になり、愛し合い、心許し……、そんなお話集。
「初恋」
 高校生の時、相手はタミーという日米ハーフ。彼女の学校のダンスパーティー。当時ロバートは年上S女性に調教されていた(どんな高校生?)。真剣な恋愛は初めて。タミーの方がお熱のはずが、いつしかゲームは逆転。ロバートはメロメロ。彼女にボーイフレンドができて嫉妬のあまりストーカー。ついには彼女の学校に転校までして、その日、完全に振られた。
「キスの思い出」
 シドニー時代。リンデルという女性と初デート。観劇、食事、ドライブ。「ザ・ギャップ」という灯台がある高台。デートスポットで自殺の名所。キスする勇気もきっかけもない。

……気がつくとぼくはフェンスを飛び越え、崖っぷちに立っていた。そして、こんなことを言っていた。「リンデル、今キスしてくれなかったら、オレはここから飛び降りる!」
 本当にとっさに出た行動だったが、効果は抜群だった。リンデルは一瞬びっくりした顔をしていたが、すぐに笑い出し、ぼくのところにやって来ると、長い長いキスをしてくれた。……

 一年後、別の女性に同じ手を使った。彼女はロバートを残して笑いながら立ち去った。
 年上のS女性が気になる。
「奴隷」
 エリカ21歳大学生。ダンスパーティー、ロバートは年をごまかして参加。

……踊っている間、彼女はぼくのことを観察するような目で見ていた。
「このパーティー、つまらないわ。出ない?」と彼女が言い、タクシーに乗ると山手の洋館に連れて行かれた。
(父は貿易商で出張中、彼女は一人暮し。ジャズのレコード、高級ワイン……)
ぼくはかなり緊張した。場違いな、大人の世界へ間違って足を踏み入れてしまった気がした。
ぼくたちはしばらく話をしたあと、軽くキスをし、ベッドルームへと移動した。服を脱がし合い、ベッドに入ったが、緊張していて勃つものが勃たない。困った顔をしているぼくを押し倒すと彼女は「足を開いて」と命令した。……

 M性を見抜かれた。半年間の奴隷生活。
 各章に「愛の名言」。
「奴隷」のそれは、
 あまりにも長い間セックスしていないので、誰がどっちを縛るんだったか忘れてしまったわ。 ジョーン・リヴァース

◇ 雑誌
■ イラストノート』 NO.27 誠文堂新光社MOOK 1600円+税 
特集 本の仕事  ブックデザインと装画との関係、ZINE、手製本、豆本…知っておきたい本の現場。
名久井直子  イラストレーションを巧みに駆使するブックデザイナーの仕事
特集1 装画を描く  丹下京子 大島依提亜(いであ) 北村人(じん) おかざき真理 ……
特集2 手づくりの本が持つ可能性  JUN OSON  MOUNT ZINE  ZINE Creators  美篶堂(みすずどう)


■ 『別冊 太陽 新美南吉 [ごんぎつね][手袋を買ひに]そして[でんでんむしのかなしみ]――悲哀と愛の童話作家』 平凡社 2500円+税 
巻頭の話 新美南吉の未知の世界  五木寛之
1 『赤い鳥』の時代  すべては「ごん狐」より始まる
2 幼年童話の時代  私の童心よ ほろびずにあれ
3 少年小説の時代  花束ノヤウナ心ヲ抱イテ
4 炎の執筆  金色の夕暮れにめぐまれて

(平野)