週刊 奥の院 6.26
■ 諏訪哲史編 『種村季弘傑作撰[Ⅰ] 世界知の迷宮』 国書刊行会 2500円+税
全2巻、[Ⅱ]は7月予定。
催眠術師とあやつり人形 マニエリスムの発見 肉体について
恐怖と快楽の逆宇宙 K・ケレーニイと迷宮の構想 逆戻りする地球
器具としての肉体 吸血鬼のエロティシズム 黒い錬金術 ……
(帯)
怪物、吸血鬼、少女幻想、詐欺し、錬金術、人形、マニエリスム――怪人タネラムネラの膨大多彩な著作の中から、傑作本格評論38編を2巻に精選した《タネムラ・ワールド・アトラス》。
種村季弘の教え子であった諏訪哲史が、入魂の編纂解説。
多面体文学者の無限迷宮を一望に!!
逆戻りする地球
装丁 間村俊一
■ 『酒井潔・著・編・装 エロエロ草紙 復刻版』 彩流社 2500円+税
80年前の発禁本を完全カラー復刻。国会図書館電子書籍配信実験(2.1〜3.3)の結果、ダウンロード数1位、1万7949件。ネットではモノクロだった。
復刻にあたって、オリジナル版と違う個所がある。表紙デザインそのままのカバーをつけた(物流上、本の保護のため。背表紙・裏表紙もオリジナルの風合いを生かした)。5ページ目の「仕掛け」もオリジナルとは異なる。
作者・酒井潔(1895〜1952)について。
本名、酒井精一。魔術・秘薬・性愛に関する文献を収集し、『アラビヤン・ナイツ』などの海外文学の文献の紹介。大正末期から昭和初期にかけて、エログロナンセンス文化を牽引しました。
おもな著作に『愛の魔術』『らぶ・ひるたあ』『薫苑夜話』『悪魔学大全』などがあります。特に、あこがれの人物であった南方熊楠邸への訪問記などは広く知られています。また、酒井の仕事は後の澁澤龍彦や種村季弘などにも影響を与えています。(編集部より)
目次
接吻……詩 キッス種々相……漫画 女給受難……同 禁断の楽園……彩色画
エログロ舞踏会……同 恋のらく書き……同 上には上……漫文 ……
自跋
エロエロ草紙はイロイロ草紙である。即ち種々な色々を陳列展観する意味である。草紙はもちろん江戸時代の草双紙のつもり。されば画主文従が立前である。
エロエロ草紙は一夜漬の夜店商品ではない。著者が多年孜々として続けて来た蒐集癖の一ツの現われである。
エロエロ草紙は……(略)......
昭和五年一一月
酒井潔
(目次・自跋とも旧字・旧かな)
確かに裸体画が多いが、モダンなタッチで洒落た画風。しかし、時代は暗い。左翼運動はもちろん、頽廃的な芸術も弾圧の対象だった。
(平野)