週刊 奥の院 6.19

 岩波文庫 新刊から
■ カルロ・ゴルドーニ作 平川祐弘訳 『珈琲店・恋人たち』 840円+税 
 18世紀ヴェネツィアの劇作家、喜劇2篇。
珈琲店」、1750年初演。ちょうどイタリアで珈琲が広く飲まれるようになった頃の時代風俗が描かれている。
 小広場に3軒の店。珈琲店をはさんで右が理髪店、左が賭博屋。正直者・礼儀正しい珈琲店主、ならず者の賭博や主人、悪口達者な人騒がせ男、若い夫婦、裕福な家の息子で遊び人、ニセ伯爵、踊り子……、「人間類型として特徴的な登場人物の会話の応酬」。

■ 吉田健一訳 『訳詩集 葡萄酒の色』 900円+税 
ベレイ オリヴを讚へる十四行詩  
シェイクスピア 十四行詩抄
バイロン もう我々はこのやうに
キイツ 憂愁に就いての頌歌
ボオドレエル 秋の歌
……
 ルネサンスから20世紀にいたる英仏の詩人13名の詩。「独自の審美眼」で選んだ詩を「個性的な文体」で翻訳。
 解説・富士川義之。巻頭にギリシア語のホメロスの『オデュッセイア』の一節。書名の由来はこれ。
「眼光輝くアテネは一行のために順風を起し、激しい西風が、葡萄酒色の海の面を、音を立てて吹き渡る」
 元本は1964年垂水書房(限定500部)。翌年同社から普及版。 

■ C・アウエハント著 小松和彦中沢新一飯島吉晴・古家信平訳 
『鯰絵 民俗的想像力の世界』 1440円+税
 安政2年の江戸大地震直後に出回った多色刷りの鯰絵。絵と詞書には「世直し」など民衆の願望が表現されていた。
 著者は、1920年オランダ・ライデン市生まれ。ユトレヒト、ライデン両大学で中国語、日本語、文化人類学を学び、51年からライデン国立民族学博物館(「鯰絵」の宝庫)で研究。68年チューリッヒ大学教授。日本留学も経験。原著は64年の学位論文。日本語訳は79年せりか書房刊。 


 岩波現代文庫から
■ 高橋源一郎 『大人にはわからない日本文学史 860円+税
 09年岩波書店

■ 倉田喜弘 『文楽の歴史』 1240円+税 
 文庫オリジナル。
「大阪に根ざした伝統芸能としての文楽の歴史」

(平野)