月曜朝礼新刊案内

【文芸】 クマキ 
■ ロバート・F・ヤング 伊藤典夫編 『たんぽぽ娘』 河出書房新社 奇想コレクション 1900円+税
 海外のSF、ファンタジーの名作を集成するシリーズの最終巻。ヤングの作品、初訳含め13編掲載。
 表題作は『ビブリア古書堂の事件簿』(三上延アスキーメディアワークス文庫)に登場して話題になった作品。集英社コバルト文庫(1980年刊、ブラッドベリ他8編収録)。単独で「復刊ドットコム」より復刊予定。

【芸能】 アカヘル
■ 木皿泉『木皿食堂』 双葉社 1400円+税 
1.実感のある、日常の手触りを   エッセイ
2.「どーせ」とか言ったら、そこでおしまい   インタビュー
3.イヤなシーンは一切書かない! って戦った   対談 × 羽海野(うみの)チカ
4.作りものだって感じさせない話作り   解説・書評
5.「木皿ワールド」とか言われていますが   シナリオ講座
6.私が帰る家がある   シナリオ

夫婦脚本家が語る、日常の「奇跡」 (帯)
 表題は神戸新聞で月1回連載しているエッセイ。その第1回「お茶の味(2011.5.1)
(1) 中国茶に凝ってみようと入門書を読む。ガクゼンとする。入門者は絶対に飲んではいけないと書いてある美味しすぎるお茶を最初に飲んでしまっていた。
(2) 姪が結婚。遠く離れた福島に嫁に行った。東日本大震災で式どころではない。
(3) 友人夫婦から子猫の写真が送られてくる。生まれたての子を拾ってきて、写真のサイズがだんだん大きくなる。「親バカ」。この夫婦、阪神・淡路大震災で家族を失っている。
(2)と(3)はつながる話だと思う。(1)はどうなるのか? 新聞掲載の短い文章でどうまとめるのか心配。
 新たに(4)、相方(和泉、男)が脳内出血で入院したとき、彼が一番したかったのは家でお茶を飲むことだった。(つながる予感)退院して不自由な体を座らせてお茶を出すと、彼はうまそうに飲み干した。

 あの頃、ただお茶を飲むという、この時間を取り戻したくて、私も相方も必死だったなぁと思います。
 あの時間があって今の私たちがある。・・・・・・いいことも悪いことも、全部ひっくるめて今の自分たちを作っているのだ、とつくづく思う。・・・・・・

【児童】
■ 石井桃子 『家と庭と犬とねこ』 河出書房新社 1600円+税 
 児童文学者・翻訳家(1907〜2008)、単行本未収録の随筆多数。
 表題作品は、自宅入手のいきさつ。戦時中にさかのぼる。元は第一の親友の家だった。その友人が亡くなり、あとを継ぐ人がいない、借り手もなく、石井が住む。戦争があり、一時東北に移り、地代やら税金やら、いろいろあって、土地も石井が買うことになった。
 犬はケガをして飛びこんできた。ねこは友人が連れてきた。

 家も庭も、ねこも犬も、求めて、手をだしたのでもないのに、私のところに転がりこんできた。そのいきさつを知っている友人は、「家や土地のことで、人なみの苦労をしない人間に、人生はわからない」よいう。私も、きっと、そうなんだろうなと思っている。


■ 安野光雅 『旅の絵本 Ⅷ 』 福音館書店 1400円+税 
 昨年テレビで製作中の場面が流れて問い合わせが多く寄せられていた。
 今回の主な舞台は安野のふるさと「津和野」
 自分の子どもの頃の日本を描こうと思っていた。「いまの言葉でいうと、節電の世界を描くこと」になった。
 文明の進歩の歴史はエネルギー獲得の歴史。

・・・・・・
 わたしは、やがて原子力発電所が作れないときがきても、あわてない覚悟をしなければならぬ、とおもいます。
 原子力発電所をなくしたとしたら、ここまで進歩した文明は、いろんな障害にぶつかるでしょう。
 わたしたちは、人類の力を越えた「歴史の流れ(文明の進歩のいきつくところ)」とでもいうようなものに、身をまかせて生きてきたのだなとおもいます。
 どうすればいいのか、わからないわたしたちは、さしあたり、危険性をはらんでいる原子力発電を止めてみてもらいたいと願います。
 電気がない、あるいは少ない時代になっても我慢しようとおもいます。
 そのために、遠くまで水をくみにいかねばならぬようなときがきても我慢しよう、とかんがえます。
 それはできないと心配する人がいますが、わたしは、そうした電気の極めて少ないときをすごしたものですから、電力が少なくても生きていけるとおもっています。・・・・・・

(平野)