月曜朝礼新刊紹介

【文芸】 クマキ 
■ 森見登美彦 『聖なる怠け者の冒険』 朝日新聞出版 1600円+税
 朝日新聞連載小説を全面改稿。
 現代京都、「正義の味方・ぽんぽこ仮面」の後継ぎとして目をつけられたのは、筋金入りの怠け者・小和田君。

「我が輩はぽんぽこ仮面だ。街の人々を助ける正義の怪人。みんなが喜ぶスバラシイ仕事。これはただの人助けではないのだよ。善意を信じる力を取り戻した人々の喜びが、我が輩の魂をも救うのだ。(略)粗大ゴミを捨てる手伝いとか、息子の宿題とか、切符の予約を頼まれる。手伝ってあげたいのはヤマヤマなれど、いくらなんでもそれは自分でやれ、そう思うことはたしかにある。(略)我が輩にもいろいろと個人的な事情があってな、もうこの副業を続けられなくなる。だからといって、せっかくのぽんぽこ仮面をこのまま引退させてしまうのは惜しいではないか?」
(断り続ける小和田君。同じやりとりの繰り返し)
「正義の味方というからには、まず悪の組織に対抗できるだけの『マッソウ』すなわち筋肉がなくてはならない。しかし僕の腕を見たまえ。笹かまぼこみたいに繊細だ。こんなマッソウで、どうやって悪の手先をねじ伏せることができようか!・・・・・・」

 筋肉的課題の他、精神的課題――悪人ではないがとりわけ善人でもない、美女に弱い(スケベだ、豊満な悪女がすり寄ってきたら寝返る・・・・・・)も挙げる。 



■ フジモトマサル 『聖なる怠け者の冒険 【挿絵集】』 朝日新聞出版 1500円+税
 連載時の挿絵。フジモト・森見のコメントつき。

 文芸担当は小説よりこっちが好みらしい。



【新書】 
■ 草間彌生 『水玉の履歴書』 構成・鈴木布美子 集英社新書 680円+税
 
 前衛芸術家、小説家。2012年1月から開催された「草間彌生 永遠の永遠の永遠」展は4会場で36万5千人入場。
 

 人々は私のことを水玉の女王だと言います。私は子供の頃から水玉を描き続けてきました。水玉を創造発展させることによって自分の命を認識していなければ、心の病気にかかった私は自殺していたことでしょう。
 円が平面で活発な動きがないのに対して、水玉は立体で無限です。そして、水玉はひとつの生命であり、月も太陽も星も、数億粒の水玉のひとつなのです。これは私の大きな哲学です。水玉による平和をもって、永遠の愛に対する憧憬を心深く打ち上げたいと思っています。・・・・・・



【芸能】 アカヘル
■ 大阪府立大学観光産業戦略研究所+関西大学大阪都市遺産研究センター+新なにわ塾叢書企画委員会 編著
『大阪に東洋1の撮影所があった頃  大正・昭和初期の映画文化を考える』 ブレーンセンター 2000円+税

(帯)

1930年代、日本映画館の10%は大阪にあった!!
明治末期、千日前に映画館が登場するや、大阪人の血は沸き返り、またたく間に新世界、道頓堀そして周辺地域へと爆発的に増え、1930年代には、日本映画館の10%は大阪にある、といわれました。同時にその頃大阪には東洋一を誇る映画撮影所まで誕生したのです。本書は、今も息づく大阪人の“映画好き”DNAが歴史のなかでもっとも輝いていた頃への旅の物語です。

 

1.わが映画人生を語る  安井喜雄インタビュー
2.日本映画王になれなかった男
3.花開く大阪キネマ文化
4.大阪の風景と戦後日本映画  橋爪紳也芦屋小雁、船越幹央
5.「反骨魂」と大阪映画
6.大阪の映画と文学
7.海を超えるサカモトism  阪本順治

(平野)
【文庫】
■ 水田勁 『いくさ中間  紀之屋玉吉残夢録』 双葉文庫 619円+税
 武士を捨て幇間になった玉吉の裏稼業は奉行所の手先。シリーズ第2作。
 息絶える寸前の浪人から託された金を届けた先は、10歳の娘。亡くした自分の娘の姿を重ねて、事件の真相を調べる。
 玉吉、本業の芸は裸踊りのみ。

 すみません、私、帯に推薦文を載せてもらっています。「双葉社イチ押しの新人」さんの足を引っ張ります。ほんとに、すんません。

主人公は裸踊りしかできない幇間だが、裏稼業はお上の手伝い。
沈着冷静、強い精神力、腕も立って、人情深い。しかも、悲しい過去・・・・・・ハードボイルドだど!(陳さんゴメン)