週刊 奥の院 5.9

Coyote』3月末刊。入荷遅れ。
■ 『Coyote』 No.48 スィッチパブリッシング 1400円+税 
特集 今、旅を書く The Best Travel Writing  写真 ロバート・フランク
角幡唯介 七キロ先の誤差  内澤旬子さま イスラエルの豚は、宙を歩く
佐々涼子 会えない旅  内野加奈子 何も知らない
武田圭 海に向かう日  他、中村計、堀内加奈子、小林エリカ坂口恭平

はじまりの物語
伊藤比呂美新訳『イソップ物語』 絵・黒田征太郎
不思議な文学史イソップを生きる  
対談 池澤夏樹×伊藤比呂美 「物語の生まれる場所」
対談 柴田元幸×伊藤    「翻訳道場へ」
天草DATAFILE
石牟礼道子「教えを旅する」 他

イソップ物語』はもともとギリシア語で書かれ、ラテン語に翻訳されたもの。
ギリシア語で「アイソポス」、英語読み「イソップ」。日本ではポルトガル宣教師の発音が「イソボ」「エソボ」と聞こえた。漢字「伊曾保」をあてた)
日本で最初に流布された『イソップ物語』は一五九三年(文禄二)、九州は熊本県天草の耶蘇會學林において刊行、 “ESOPO NO FABVLAS”( グーテンベルク印刷機で制作刊行)。
 宣教師たちはローマ字に綴られた『イソップ物語』を通して日本人修道士の教育。そして人々へのキリスト教布教につとめていった。……「天草DATAFILE」より。
 伊藤訳も天草版から。
「女人と、大酒を呑む夫のこと」より。
 夫は大酒飲みで、女房が嘆く。ある日夫はまたも酔い伏す。

……
 そこを女房、背にかついで棺の中へ入れ、そのまま置いて、酔いが醒めた頃合いに棺の戸をほとほとと叩いたら、中から、たった今、目が覚めたとおぼしき声で、
「誰だい」と尋ねるので、
女房が、
「死人に物をを食わす者だよ」と言えば、また中から、
「酒なしの食い物だけならいらねえよ」と。
それを聞いて女房は力を落としてこう嘆いた、
「まだうちのやどろくは酒を忘れてくれないのかい。いい手だと思ったのにちっとも役に立たなかった」と。
下心(教訓)。
 誤りも、まだ根をおろさぬうちには改めることもできるだろうが、古い癖は改めにくいということぢゃ。

 天草にキリスト教が根づき、1580年当時、30ヵ所の聖堂があった。時の統治者、天草久種はイエズス会の教育制度を取り入れた。初級学校・ミナリオ、修道士養成・ノビシアド、神父資格獲得・コレジヨラテン語、神学、天文学、数学、医学、修辞学など多彩な内容。
 コレジヨの一角に天正少年使節(1582〜90)が持ち帰ったグーテンベルク印刷機が置かれた。(「天草DATAFILE」より)

(平野)
 山口県周防大島みずのわ出版から新刊案内「島の版元つうしん Vol.1」到着。