週刊 奥の院 4.24

■ 小林凛 『ランドセル俳人の五・七・五』 ブックマン社 1200円+税 
 2001年5月大阪生まれ、不登校男子の句集。俳号は、幼稚園のときに知った小林一茶にちなむ。
 未熟児で生まれ、病弱で運動能力も劣る。少しのケガが命取りになる。入学してすぐに暴力的いじめが始まり繰り返された。先生方は彼の存在を無視する態度。祖母が彼の事情を教室でみんなに説明したが、かえってひどくなった。何度も休学。
 俳句、2010年12月「朝日俳壇」に初投句初入選、その後もたびたび入選。
「僕には俳句がある!」と言えるようになった。
 小4の担任教師は喜んでくれ、授業中に「ハイ、一句!」と彼に声をかけた。その句を連絡帳に書き留めて家族に知らせた。

 俳句講座で「朝日」選者の長谷川櫂に句をいただいた。
 「小さく生まれ大きく育て雲の峰」
 祖母と文通するアメリカ在住の教育者から、「たくさん作りなさい。絵もいっしょに描くように」とアドバイスされる。

 小5になると、いじめはますますひどくなる。ついに「退学」を宣言。学校が彼を受け入れなかった結果。
 食後、祖母、母と句会。不登校を決断したことで、家族も穏やかな時間を得た。
 
 ブーメラン返らず蝶となりにけり 
 生まれしを幸かと聞かれ春の宵 
 いじめ受け土手の蒲公英一人つむ
 いじめられ行きたし行けぬ春の雨
 
 小3のときのエピソード。公園で拾った蟬の抜け殻を大事にしていたが、祖母が捨ててほしいと言う。彼は譲らず、根負けした祖母が「一句出たら置いといてもいい」と。
 抜け殻や声なき蟬の贈りもの
 素人が言うのも恐縮。小3にして人生の無常を知り表現している。

 今は教頭先生が週1回訪問。通信指導教室の先生が来てくれたとき、彼は思いの丈を訴えた。大津の事件にも言及した。
 個別指導の塾に通う道すがら、寒風の中で、
 冬ざれや小石を溝に蹴飛ばして


◇ 全国新聞社ふるさとブックフェア 各社の本紹介 その1
■ 北海道新聞
 出版社のおすすめは、同社編『ほっかいどう 100の道』(1300円+税)。
 読者が選んだ道内の100本の道路を丹念に歩き、その歴史を伝え、地域の人々を取材する。開拓の道、産業を支える動脈、自然の大パノラマ、歓楽街の裏道や青春の通学路……。
 歴史写真集、『はこだて写真帳』(1500円+税)、『室蘭の記録』(2000円+税)他、鉄道写真集、食と旅の本など。

■ 河北新報出版センター
 昨年は第2位の売り上げでした。東日本大震災関連と郷土史の本。
 おすすめは、太宰幸子『地名は知っていた 津波被災地を歩く(上・下)』(各800円+税)。行政上の地名ではない通称地名はいずれ消えてしまうだろう。そこには後世に伝えるべき知恵があった。「祖が残してくれた、大きな古里の財産」を次世代にも。
 
(平野)