月曜朝礼新刊紹介

【雑誌】 アカヘル 
■ 文藝別冊 『総特集 木皿泉(きざらいずみ) 物語る夫婦の脚本(これまで)と小説(これから)』 河出書房新社 1200円+税
木皿泉」、脚本家、夫婦で共同執筆、夫・和泉努、妻・妻鹿年季子。神戸在住
「新・やっぱり猫が好き」(1990〜91)、「すいか」(2003)、「野ブタをプロデュース」(2005)、「セクシーボイスアンドロボ」(2007)など。今月、初の小説、『昨夜のカレー、明日のパン』(河出書房新社)刊行予定。
 ロングインタビュー「夫婦脚本家、小説家になる」 聞き手・重松清

――「木皿ワールド」という世界がすべて好きだというファンが多いと思うんですが……
(妻鹿)テレビドラマって、どこかで私たちが作ったものじゃなくて、スタッフ、キャストのみんなが作ったものだ、という風に思っているんです。役者さんの演技だったり、私たちが発信していることプラスアルファの要素がものすごく多いので、それに対してのファンなんじゃないかなと思う。だから私たちはファンの人に関しては「ああそうか、好きなんだろうなあ、結構なことだなあ」ぐらいにしか思ってない。……
――小説って比較的制約がない世界だと思います。初めての小説をお書きになって、今の段階での感想なり感慨はいかがですか?
(妻鹿)とにかく、「できてよかった」と。だって、この小説、9年前に最初に頼んできた出版社の人が社長さんになっちゃったんですよ!(笑)それも一昨年。それを聞いたとき、私は「日本昔ばなし」みたいだなと思って。……


木皿泉」は元々和泉のペンネームで、ラジオドラマの脚本家だった。妻鹿はマネージャー役、自分でも書いたが採用されず、直し担当。和泉は漫才の台本(小づえ・みどり)もうあっていて、忙しいときは妻鹿が書いた。
 順風満帆ではなかった。「すいか」向田邦子賞受賞後、和泉は脳内出血で6カ月入院、自宅介護。その年「野ブタ〜」。和泉は寝たきりで、いろいろ言って、妻鹿が書く。
「その場その場書いた。これを書いたら次の回で絶対困る、これは最終回までとっておかなきゃ、と思ってるものも、毎回毎回締切が来る度に全部書いちゃうんですよ」
「セクロボ」では、妻鹿がうつ状態に。
 今は、和泉がアイデア・ネタを出して、子供の頃の思い出をたくさんして、妻鹿が書けそうと思ったら一気に書く。
 今後も小説をやっていくのかと問われて、
(妻鹿)もう、これがお金になるんなら何でもするよね(笑)。ね、トムちゃん(和泉の愛称)。


【人文】 ひらの 
■ 神戸市立博物館・編 『神戸市立博物館で楽しむ歴史と美』 神戸新聞総合出版センター 1300円+税
 1982年、南蛮美術館と考古館を統合した。旧居留地中央区京町筋。建物は「旧横浜正金銀行」を活用し、新館を増築。本書は常設展示に沿って紹介する。
1.東アジアとの交流  狩人たちのくらし  稲作のはじまり  青銅の祭器  竪穴住居  古墳のはじまり  海の豪族 ……
2.地方文化の発展  神戸市内の群衙と古代山陽道  地方寺院の成立  兵庫の港と瀬戸内の流通  中国・朝鮮との交易 ……
3.江戸時代の兵庫津  藩領から幕府領へ  海運と商業 ……
4.鎖国下の日本と外国  対外関係  異国船の接近と漂流  海外との文化交流  洋学
5.開港をめぐって  摂海の防備と兵庫開港  居留地  貿易のはじまり ……
6.文明開化と近代化  神戸の外国人  異人館  文明開化  新しい産業 ……
ギャラリー  神戸ゆかりの芸術家たち
コレクション  美術  古地図  びいどろ・ぎやまん・ガラス

 収蔵品約5万6千点。国宝1点、重要文化財76点。昭和初期から池長孟(1891〜1955)が収集した7千点を核にしている。池長コレクションは「南蛮美術」を中心に、江戸時代後期の洋風画。長崎版画など。自ら「池長美術館」(1940〜44)を創設して公開していたが、戦後散逸の危機となり神戸市に委譲した。 

(平野)