月曜朝礼新刊紹介

【文芸】 クマキ  

■ 原田マハ 『シヴェルニーの食卓』 集英社 1400円+税
 関西学院大学卒業後、早稲田大学で美術。キュレーター。山本周五郎賞受賞・本屋大賞候補作品『楽園のカンヴァス』は美術作品をめぐるミステリーだが、本書は、ドガセザンヌ・モネ・マティスら画家たちの人生を女性の視点から描いたもの。「シヴェルニ―」は「クロード・モネの王国」――広大な庭と館。

……
 このノルマンディー地方の小村、シヴェルニ―へ最初にやってきたのはもう三十八年もまえのことだが、そのまえも、そのあとも、泣いたり笑ったり、ほんとうに色々なことがあった。(38年間で社会も家庭もめまぐるしく変化した)
……一家の長たるモネの絵が徐々に世の中に認められて売れるようになり、それに伴って家庭の経済状態はぐんぐんよくなった。家を直し、アトリエを増築し、理想的なすまいに仕上げていくことができたし、土地を買い増して、庭をどんどん広げて、気がつけばこんな理想郷を作り上げていた。(複数の庭師と使用人、自動車、運転手を雇う)
……ひたむきに仕事に向かい合い続けたこと、十九世紀から二十世紀へと時代が大きく動き、幸運にもその節目をどうにか飛び越え生きながらえたこと、そのふたつが今日の豊かな日々をもたらしてくれたのはまちがいない。……

 残念なこと。画家仲間マネ、セザンヌらは、この時代を体感せずに逝ってしまった。家族を次々失った。子供たちは成人して巣立って行った。モネはひとりぼっちになった。

【芸能】 アカヘル 
■ 小林信彦 『新編 われわれはなぜ映画館にいるのか』 キネマ旬報社 2800円+税 装幀・和田誠 元版は晶文社、1975年刊。古書価は高いそう。
 巻末の対談2編。
植木等との別れ」はすでに人前に出なくなったころの植木との対談。
「いまひとたびの『仁義なき戦い』」は、詩人・評論家の柴山幹郎との語りおろし。

【人文】 
■ 田中康弘 『マタギとは山の恵みをいただく者なり』 耷出版社 1500円+税
「山へ入り 獣を獲り 菜を採り 魚を捕り つまりは  神住まう 山から 命を戴く 真摯なる 民の物語」(帯)
 著者は1959年佐世保市生まれ、島根大学農学部林学科卒のカメラマン。本書の舞台、秋田県北秋田市阿仁に20年以上通っている。2004年から「マタギ自然塾」を開催。
 大雪の中での取材だった。

……
 私はよく「この雪こそが阿仁の、そしてマタギの基本だ」と口にする。この大切な雪があっての春であり、夏、そして秋なのだと。
「おめはここに住んでないからそんなことが言えるんだぁ、住めばいっぺんでやんなるぞ」
……自給自足が狩猟採集の目的であり、あおれを可能にする自然がある。そのベースが阿仁では間違いなく雪なのだ。……

【雑誌】 
■ 『考える人』 2013年春号 新潮社 1429円+税
 創刊10周年。
特集 小林秀雄 最後の日々  生誕111年 没後30年記念
 特別付録 河上徹太郎との対談「歴史について」(1979年7月23日)
 小林と河上は旧制中学時代からの付き合い。著書を贈りあうが、礼は言わない。ちゃんと読んでくれる、ちゃんとわかってくれる、とわかっている。互いの葬式にも出ないと言う。
(河)どうせ、出ても相手はいないのだから。
(小)思想上で交わっていれば、充分……。

■ 『ソトコト』 5月号 木楽舎 762円+税 
特集 おすすめの図書館 Social Library  Guide  
「長居したくなる! ソーシャルな図書館が大集合!」
 パフォーマンスユニットが館内を練り歩く図書館。カフェがあり、ドラムセットを置いている図書館。イベントや展示の多い図書館。「森の図書館」、「移動図書館」、作家の蔵書・資料を基にした図書館。ご先祖探しができる図書館。パン屋みたいな図書館……。
 人が集まり交流する地域コミュニティの中心、居心地の良い空間、社会の課題に取り組む……89の図書館(海外を含む)。

(平野)