週刊 奥の院 4.4

■ 井上ひさし 著  萩尾望都 絵 『水の手紙 群読のために』 平凡社 1200円+税 
 水の大切さを訴える世界の人々の手紙を群読する劇。2003年「国民文化祭やまがた・2003」で初上演。
わたしたちは水です――
子供たちの未来と水惑星・地球の行方への祈りをこめて井上ひさしが綴った「水の手紙」。
(帯)
湖が消えた(ウズベキスタン)  川が消えた(コロラド川黄河)  地面も沈む(メキシコシティー)  島が沈む(モルジブ)  遠い井戸(チャド)  バラを枯らす雨(パリ)  水争い(チグリス・ユーフラテス)  水が出た(アフガニスタン
「水が出た」

少年A  わたしたちの村はアフガニスタンの北にあります。
少女  ヒマラヤ山脈の西、ヒンズークシ山脈のふもとです。
少年B  毎年、山に降る雪が少なくなって、雪解け水が流れてこなくなりました。地下水もへる一方で、井戸からも水が出なくなりました。
少女  地球が温室のようになって、それで雪が少なくなったのだそうです。
少年B  井戸をもっと深く掘ることができればいいのですが、そのお金がありません。それで村から出て行く人がふえました。
少年A  でも、今年、日本のボランティアの方がたが井戸を掘ってくださいました。
三人  そして、わたしたちの村の井戸に水が出たのです。
……
全員で、
カブール川の水は 日本の水 
日本の水は 世界の水
水はめぐる 世界をめぐる
水はひとつ 世界もひとつ


■ 『文藝別冊 総特集 井上ひさし』 河出書房新社 1200円+税 
大江健三郎×丸谷才一×井上ひさし 「新人であるということ」
小沢昭一×井上ひさし 「歌舞伎あれこれ」
井原高忠×井上ひさし 「テレビほど素敵な商売はない」
別役実×坂手洋二×平田オリザ 「井上ひさし日本劇作家協会

他、井上のエッセイ、戯曲、縁の人たちのエッセイ。
 中村哲「拝啓、井上さん」より。
 井上は、アフガンで井戸を掘り続ける中村の著書『医者、井戸を掘る』(石風社、2001年)の書評を最初に書いた。また鎌倉に中村を呼び講演会を開いた。

……
 七年がかりで二五㎞の用水路ができていく様は、「ひょっこりひょうたん島」そのものでありました。ドンガバチョ、魔女リカ、トラヒゲ、ライオン、子供たちなどを思い浮かべさせる人々が出入りし、いつも主題歌が流れていました。
♪苦しいこともあるだろさ、
♪悲しいこともあるだろさ、
♪だけど僕らはくじけない。
♪泣くのは嫌だ、笑っちゃおう
……あのキャラクターは非常に良くできていて、それらしい人々が本当にいるのです。ひょうたん島はただの人形劇ではなく、苦労した人にしか書けないと思いました。……

(平野)