週刊 奥の院 3.23

■ 『雲遊天下』 112 ビレッジプレス 500円+税
特集 街に会う 人に会う 
旅の絵日記  アズミ
愛すべき“のほほんノイズ”  立松カナコ
お墓参りのような 映画『傍(かたわら)』のこと  伊勢真一

街に会う 人に会う  対談:南陀楼綾繁・橋本倫史
南陀楼はライター・編集者で、ブックイベント仕掛け人。
橋本はライター、『HB』『hb paper』編集発行人。
ふたりは旅先でよく出くわす。
旅のきっかけ、橋本は音楽ライブの追っかけ、南陀楼民俗学のフィールドワーク。

(南)去年は仙台で何度も会ったね。ぼくもツイッターをやっているけど、あれは現在地を伝えるものでもあって、それを頼りにどこかで人と会うことができる。「仙台の喫茶店で……」とツイートして、ふと後ろを見るとちょっとはなれた席に橋本さんがいるんだよね。
(橋)声もかけずに。
(南)入ってきてすぐに声をかけるのなら分かるんだけど、しばらく泳がすというね。……

 その仙台でブックイベントを実行している人たちが「ちいさな出版がっこう」を企画。受講者が自分の作りたい本を形にする。ふたりも関わる。

(橋)ライブを観て、適当なところで牛タン食べて「仙台でした」で帰ることが多かったんですけど、「ちいさな出版がっこう」の人たちと知りあったことで、普通に歩いていても見えない地図が見えたというか、あの店とこの店があってその人たちが一緒に何かやっていて、ということを教えてもらうと、普通に訪れているだけでは見えてこない違う層が見えてきて、仙台がおもしろくなったんです。……
 人の動きは単に移動しているだけだと見えないものだけど、「ちいさな出版がっこう」に通うことで一本串が通ったような気がしました。ぼくにはそういった串がなかったので、新鮮でした。
(南)震災のあと、二〇一一年の動きでいうと、東北で本のイベントをやってきた人たちの中で、まず仙台が「やります」と言った。
(続いて盛岡、秋田、山形、福島)
 東北五県の人たちの行き来が生まれたんです。それはすごく健全なことだったと思う。震災で生活自体が成り立ちにくいようなときで、「本なんて何の意味があるんだ」みたいなことを言われたりするような状態で、それでも本に関するおもしろいことをやりたいんだと動き出した。それを助けるというよりも参加したいという気持ちで東京からもたくさんの人が東北へ行って、そこでも行き来が生まれた。本のイベントをやっていてよかったなと思えた瞬間でしたね。

(平野)