週刊 奥の院 3.15

今週のもっと奥まで〜
■ 田辺聖子エッセイベストセレクション(1) 『女は太もも』 文春文庫 590円+税 
 聖子さんの“大人の男女のアチラの話”を集める。構成は【海】仲良し編集者S村Y生。
 表題エッセイ「女の太もも」
 聖子さんは小学校時代の同級生キタノサン(男性)と親しい付き合い。キタノサン、酒を持って遊びに来る。
 カモカのおっちゃんが入院することになって、看護婦さんのことをはじめ入院生活を楽しみにしている話をする。

「人生いたるところスカートあり、なあんて、ほんとに中年男って図々しいね」
 と私がいうと、キタノサンは首かしげ、まじめに考えこむ。
「僕なんか、リチギ、マジメ、小心ですから、図々しいとは、思われへん。……」
(素直な人で何でも素直に答えてくれる。ほんで男女の話)
「ねえ、キタノサン。男の人って、ほんまに入院しても看護婦サンのことばっかり、意識してるんですか」……
「キタノサンは、おくさんがはじめてですか?」……
「はじめて女の人を知って、何にいちばんビックリしたの? 教えて教えて」
 と私はせがむ。
「さよう」
 キタノサンは正確を期すべく、再びマジメに考えこみ、
「ふともも、でした」
「太腿」
「はあ、女のふとももって、こない太いのんか、とビックリしました。太うて白かった」
「それは何ですか、年増で肥満した女性?」
「いや、すんなりした娘でしたが、外から、あるいは横から見とっても分かりまへんでした。それが、脚あげたん正面からみたら、ほんとに太うて白うて――」
 私、一生けんめい考えたが、どうもよくその状景がハッキリしません。私の方は、というと、男性の軀をはじめてみて一番ビックリしたのは、
「あのう、揺れてる(原文傍点)ことでした。だって女の体で、揺れてるトコなんてないんですもの」
「バカ、あほ。淑女がいうことちゃう」
 昔ニンゲンのキタノサンに叱られた。


◆ うみふみ書店日記 (その11)
3月7日 木曜
休み。お雛さまお片づけ。あとは「奥の院」とブログ。

3月8日 金曜
教科書搬入作業。各学年250名くらいの県立高校で、ちょうどいい立ち上がり。ただ例年よりも人員少なく時間かかる。14時帰店。

役所関係の注文にはまず見積書提出、決裁後発注となるのだが、洋書が困る。発注時の価格が決定価格なので、変動するとやり直し。

姫路で雑誌(F店長が毎号寄稿)を発行するIさん来店。わざわざ【海】で購入してくださる。「奥の院」バックナンバーあるだけ手渡す。迷惑でしょうな。
 
K新聞Hさん、「東北大震災を被災地から読む」フェア取材。

3月9日 土曜
【海事】Gが「エライこと、教科書荷物300個くらい来る」情報を。実際は92個でした。

12月分の返品完了。ただ、版元了解のいる本が数点どっかに行ってしもうた。

3月10日 日曜
教科書作業の日の店頭ローテーションに着手。バイト君たちに交渉。彼らも忙しい。
不穏な情報。○○がカゼ? 今週中に直しておくれ。花粉症1名。

行方不明の本、見つかる。

3月11日 月曜
「朝日」山口昌男死去の記事。「縦横無尽 知の冒険者」見出しに納得。
同じく、池澤夏樹いとうせいこう対談、「小説は死者と生者つなぐ」。
【池澤】被災地には何回も通っているが、行くたびに、人がいる気配を感じる。……ずっと考えているテーマは死んだ人たちのこと。
【いとう】被災地を車で走っていたとき、暗闇の中からざわざわと声が聞こえると思った。それを聞き取らないとダメだと思った。
池澤夏樹『双頭の船』(新潮社)
いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社

H社Sさんより「新鋭作家の時代小説を読め」と依頼(命令)。私、教科書作業で倒れる予定なので、その時に読ませてもらうことにした。

ビジネス書P出版Iさんの月1訪問。春らしいファッションだが、今日はちと寒い。

3月12日 火曜
8日に搬入した学校の新2・3年生分販売。人員足りず、従業員血縁者・地縁者動員。

ビジネス書版元&販促代行の電話営業は困る。電話でパンフレットを棒読みされても頭に入らないし、こっちは入れる気もない。ファックスしてと頼む。電話している人も仕事でしょうが、そんなんで注文は出ん。営業責任者は考えお改めください。
GFの電話には喜んで出る。仕事じゃない。人間関係。

奥の院」がすべてなくなっている。要望がない限り増刷(コピー)はしない。要望を待つ。

3月13日 水曜
神戸新聞」に“東日本大震災を被災地から読む”フェアを紹介してもらった。写真入り。お客さんからお声かけいただく。

地味ながら確実に読者がいる図鑑や写真集を出版している大阪のT出版Fさん、久々の訪問。

昼から雨。風も強い。客足、悪い。

◇ 先週のベストセラー
1 都市生活研究プロジェクト  神戸ルール 中経出版
2 藤田正勝  哲学のヒント 岩波新書
3 山藤章二  ヘタウマ文化論 岩波新書
4 近藤誠  医者に殺されない47の心得 アスコム
5 宮部みゆき  桜ほうさら PHP研究所
6 森まゆみ  震災日録 岩波新書
7 浅田次郎  一路(上) 中央公論新社
8 長田弘  懐かしい時間 岩波新書
9 森功  大阪府警暴力団担当刑事 講談社
10 村上祥子  病気にならない! たまねぎ氷健康レシピ アスコム

(平野)