週刊 奥の院 3.9

■ 鈴木勇一郎 『おみやげと鉄道 名物で語る日本近代史』 講談社 1500円+税 
 1972年和歌山県生まれ、立教大学学院史資料センター学術調査員、日本近代史、近代都市史。
序章 おみやげの起源とおみやげ文化  日本の特異なおみやげ文化 「名物駅弁」 神社仏閣とおみやげの起源 「名物」と「みやげ」 ……
第1章 鉄道と近代おみやげの登場  清河八郎の「おみやげ配送」 鉄道の開通と名物の変容 明治期東海道線各駅の名物 交通の変遷と名物の盛衰 構内営業と「駅ナカ」 ……
第2章 近代・伊勢参宮と赤福  近世の一大娯楽としての伊勢神宮 万金丹、伊勢暦、煙草入れ 赤福の誕生 修学旅行と伊勢神宮 ……
第3章 博覧会と名物  博覧会・共進会・商品陳列所 「アンテナショップ」の源流 「カモ」にされる客たち 「明朗会計」への努力 日本旅行とJTB ……
第4章 帝国日本の拡大と名物の展開 
第5章 温泉観光とおみやげ
第6章 現代社会の変容とおみやげ
終章  近代の国民経験とおみやげ

 日本の観光地のおみやげは世界的には特殊なものらしい。
 2001年、ロンドン大英博物館現代日本のみやげ」展が開かれた。博物館関係者が日本訪問でおみやげを収集してきて展示。
〈……日本人はパッケージツアーを利用することが多く、一ヵ所に長く留まるよりもいろいろな所を見てまわり、しかも多くの高額なおみやげを買う……〉
 ガイドブックも、日本では海外・国内用ともに買い物・みやげ情報が満載。イギリスのガイドブックでは記述が少ない。欧米の駅売店でおみやげが売られていることはほとんどない。観光地や国際空港では売られているが、工芸品中心で、日本のように菓子や名産品はない。ハワイのナッツチョコレートは、実は1960年頃にハワイ在住の日系人が開発したもの。アジア諸国では菓子類が売られているが、日本のように土地の歴史に由緒づけたような名物はない。……
 日本のおみやげ文化を外国と比べて特徴を考える。
 おみやげの起源には諸説あるが、有力なのは「宮笥(みやけ)」説――神社に供え物をする器「笥(け)」から。もうひとつ、朝廷直轄の米倉「屯倉(みやけ)」から、都への献上品の意味に。

 神仏に捧げられたものに対して、人は神酒などを授かる。神前で酒食を共にすることで、神と人は神人供食、つまり「直会(なおらい)」を果たす。そして人びとには「おかげ」があったとされる。その「おかげ」を帰宅して家族や講員に報告するための証拠の品として、酒盃などが持ち帰られた。これが、みやげの原初的な形態であった。……

(帯)団子ひとつにも歴史ドラマがつまっている!


◆ 海文堂のイベント
□ made in 東北の現在進行形 3.15〜17 2Fギャラリースペース
被災後、立ち上がった手仕事プロジェクト。困難ななかで続けられているものづくり。復興のために作られているレアなグッズ。
<出品> 川最  三陸味処三五十  三陸さをりプロジェクト  すがた  ソーシャルニットワークプロジェクト  ツナミクラフト  ハックの家  ひょうご・まち・くらし研究所  亘理町仮設住宅  三陸鉄道グッズ・食品 などなど
15日 14:00〜16:00 東山高志講演 「手仕事による自立と心のケア 三陸さをりプロジェクト」 参加無料
問い合わせ one village one earth  0798−33−5003 

□ なんたってエシカル  3.22〜24 2Fギャラリースペース 入場無料
 フェアトレード、エコ、リサイクル、環境・社会にやさしい、素敵なあたたかな手仕事。
<参加作家・団体> あおのかぜ  小畠曜子  つるきみ  夙川さくら作業所  器れもん BUTTON&FACTORY SUZUKAKE  すずかけ作業所  one village one earth
 

(平野)