週刊 奥の院 3.2

■ 半藤一利 『日露戦争史 2』 平凡社 1600円+税  
 旅順・ウラジオ艦隊との決戦、旅順要塞攻撃、二〇三高地の死闘……、「戦いにつぐ戦い」。
(帯)より。

一戦闘の勝利に陶酔しながら、そのたびに巨大な虚無をのぞきこむ指導者たち、ますます熱狂の度を高める国民。
日本を方向づけた戦争は、前哨戦を終えて本格的な決戦へ

第七章 捷報あり、悲報あり 

第八章 旅順・ウラジオ両艦隊との決戦
第九章 旅順要塞攻撃と遼陽会戦
第十章 「二〇三高地を攻略すべし」
第十一章 旅順やっと陥落す

……それにしても、ほんとうに多くの将兵が戦場で散っている。日露戦争は陸でも海でも日本の大勝利というのが常識的な見方であるけれども、日本海海戦はともかくとして、ほかの戦闘は決してそんな生易しい見方のできるものにあらず、というのが厳粛なる事実である。戦争には勝者であるからといって栄光のみがあるのではない。
墨子の言葉を引く)
「もし心から天下の利のために天下の害を除こうと決心するならば、戦争に訴えて事の解決をはかるということが、まことに天下の大害であることを真に知らなければいけない」

〈遼陽の会戦〉
日本軍13万4千、死傷者2万3千。
ロシア軍22万4千、死傷者2万。
〈沙河の会戦〉
日本軍12万、死傷者2万。
ロシア軍22万1千、死傷者3万5千。
〈旅順要塞攻略戦〉
日本軍の死傷者7万4千。
 半藤は「死屍累々」「鬼哭啾啾」と書いて、唐の李華の詩を引く。
「屍は巨港の岸を塡(う)め、血は長城の窟に満つ。貴もなく賤もなく、同じく枯骨となる。言うに勝(た)ふべけんや。……往々にして鬼哭して、天陰(くも)れば則ち聞こゆ。心を傷(いた)ましむるかな」
 
 リーダー論、それに栄養学の観点からも。
 次回最終巻は、年末か来年初めの予定。

◆ 人文のフェア
東日本大震災を被災地から読む 在仙台編集者+書店員による震災本50冊+10冊+仙台の出版社の本
 東日本大震災以後、「出版ラッシュ」といってもよいほどの「震災本」が出ました。
「いったい何を読めばいいのか」
 被災地の人びとは、よりいっそう思いが強いのです。仙台で活動する編集者3名が、一つの「道しるべ」として50冊を選びました。選書を終えたところ、ある女性書店員から「強烈なダメだし」が発せられます。
「あんたらのセレクトにはコミックも実用書も入ってへん、こんなんアカン!」(仙台言葉はどういう感じかわからんので、関西風に仕上げました)
 ここに10冊が追加されました。ほんまに男だけではあきませんな。東北もおんなじでんなあ。
 で、すんません。フェアに参加いただけなかった出版社が2社、品切れ本が1点あります。
 

 
                                          
(平野)
 HP更新しました。フェアもイベントも盛りだくさん。
 さらに、「本屋の眼」は「海会」本紙連載100回記念。なのに、私、たいへんなミスをしてしまいました。美人妻ネタと下ネタを忘れています。こういう時こそ、糟糠の妻(誰が装甲やねん!)に感謝の気持ちを表さなければならないのに……。
 http://www.kaibundo.co.jp/index.html