週刊 奥の院 12.21

今週のもっと奥まで〜
■ 白取春彦 『情蜜のからだ』 幻冬舎アウトロー文庫 724円+税
超訳 ニーチェの言葉』の哲学者。「鳳春紀」名で官能小説、その作品集。表題作は2004年発表。
 須藤は広告代理店勤務。青森ねぶた祭のスポンサー企業の代行で、大型ねぶた製作の監督にやって来た。ボランティアの女性・友美がひとり作業中。

「早くからご苦労さん」  
「いえ、きのうははかどらなかったものですから」
 三十前後の女である。しかし、所帯臭さがない。昨夜、ねぶた師がしきりに口にしていたべっぴんの未亡人はこの女だろうと藤堂はすぐに察した。
 長い黒髪をアップにしている。藤堂は彼女のうなじの後れ毛を見やった。そこへ鼻を近づければ、女そのものが匂ってきそうだった。
 この女が性的に熟しているせいなのか、あるいは未亡人という予断が藤堂にあるせいなのか、やはり色香は昨夜の若い女たちよりもずっと濃い。薄手のサマーニットに包まれた胸にしても、かなりの豊かさがあるように見えた。
(なりゆきで藤堂も手伝う。細かい作業で姿勢にも負担がかかる)
「これじゃあ、あとでマッサージに行かなきゃ、全身が凝りそうだ」
「あら、藤堂さんでしたら、安くしておきますわ」
(彼女の本業はマッサージ師、開店休業状態らしい。店に行く)
「本当にいいんですか?」 
「商売ですもの。お安くしておきますけど」
「いえ、ちゃんと払いますよ」
 藤堂はネクタイをはずしたワイシャツ姿で腹這いになったが、これではワイシャツに皺がついてしまうということで、結局はトランクス一枚の格好にさせられた。その間、須藤友美は隣の部屋で白衣に着替えてきた。……
 藤堂はトランクス一枚の自分の尻に温かいものを感じていた。須藤友美の白衣の股間があたっているのである。
 熱の塊りであるかのように、そこだけが異様に温かい。客に対していつもこんなふうにしているのか、あるいは、今は別の意図が含まれているのか……。考えてわかることでもない。藤堂にしても妙な気持ちになる。
「はい、今度は仰向きになってください」
 藤堂は肘をつき、彼女の白衣の腿の間で体を反転させた。
 今度は太腿からマッサージが始まった。彼女は汗ばんでいる様子だ。須藤友美を眺めながら、藤堂は妙なことに気づいた。
 開いた白衣の裾の内側に、スカートが見えないのである。屈折して窓から入り込んでくる午後の陽光で白衣が透けぎみになっているのだが、やはり太腿の輪郭しか見えない。腰の丸みのラインまでもがくっきりと白衣の生地に映っている。
……

(平野)
 覆面をはずす。別に誰でもいいんですけど。
『定本 古本泣き笑い日記』サイン本は売り切れました。