週刊 奥の院 12.16

■ 山本善行 『定本 古本泣き笑い日記』 みずのわ出版 2700円+税
http://www.mizunowa.com/book/book-shousai/nakiwarai.html
 2002年刊『古本泣き笑い日記』(青弓社)に、その後の文章を加える。

……読み返してみると、まあよく本を買っているな、とか、この男、本のことしか考えていないのでは、などと、なんだか自分じゃないような気持ちになった。
 それは、私が二〇〇九年に、古書善行堂という古本屋を始めたことで、ちょっと淋しいが、以前のように毎日古本屋めぐりができなくなったからだと思う。古本屋になったことで、本の買い方が全くちがってきたのだ。買い手から売り手になって、自分の欲しい本のほかに、お客さんが喜びそうな本をも買うようになった。今はそれが楽しくなってきた。……

 夏葉社の上林曉傑作小説集・傑作随筆集撰者として出版にも関わっている。これからどんな本を出してくれるか、どんな名作を発掘してくれるか、楽しみ。
【海】の三箱古本市(2006.3.23)のことが。

……二十三日は神戸の海文堂書店で三箱古本まつりがあって、私も参加させてもらった。予想以上のお客さんで、本もたくさん売れました。もちろん私も買いました。うれしかったのは、カミユの翻訳などで知られている佐藤朔の『わが回想』という私家版(思潮社製作、一九八二年、五百部)を買えたことだ。残念なのは、浅見淵の手帖文庫『アルバム』を買い逃したこと。五千円なら買ってもいいかと思い、迷ったが、結局買えなかった。……
 その日、私の三箱の売り上げ金を頂き、いつもの焼き鳥屋さんでの楽しい飲み会。酔っぱらって京都に十時ごろ着いたが、古本三昧の一日だったのに、やはりブックオフ三条店に寄ってしまった。この日、飲み会にでた古本者のなかで、帰りにも古本屋に寄ったのは私ひとりではないか。決してほめられる行動だとは思わない。それで買った本はと言えば、……(同じ本を何冊も買っているそう、書名は本書を)でも本当に楽しい本なんだよなあ。

 他の本でも、同じものを何冊も持っていて、あちこちに置いて、読みたいときに読んでいるとか。何と贅沢な読書生活。
 開業前は塾の先生。

……今日は中学三年生の最後の授業だったのだが、授業中に一人の生徒が、作文を読みたいと言って立ち上がった。「この塾でのことを大切な思い出として覚えておきたいと思います」とか「先生は勉強以外のこともいろいろ教えてくれました」とか「プロレスの技まで教えてもらえるとは思いませんでした」などと言っている。また冗談やっとると思い聞いていたのだが、ふと見るとほんとうに泣いて読んでいる。
 勉強はあまり熱心ではなかったが、気持ちの優しい子供たちだった。

 塾が楽しかったんでしょう。

 
 
(平野)