週刊 奥の院 12.15

■ 北條一浩 『わたしのブックストア  あたらしい「小さな本屋」のかたち』 アスペクト 1600円+税

 お店を営んでいる人の顔が見える、小さな本屋。その魅力を追いかけた本です。本が売れない、読書をしなくなった、といわれるこの時代に、どんな思いで本屋を続け、どんなアイデアと工夫で空間を作っているのか、店主の皆さんに「わたしのブックストア」を語っていただきました。

小さな新刊書店はほんとうに少なくなった。絶滅危惧種です。中規模だって危ない。本書では古書店が圧倒的に多いのですが、光っている「小さな」新刊書店があります。 

幸福書房(東京・代々木上原
 店主の岩楯さんは朝8時頃から夜中12時半頃まで店を開けている。
 寝る時間は?
「昼寝するんですよ(笑)」
 35年続く町の本屋。20坪の店に人文書・文芸書を並べる。
 

 雑誌の売り上げがもっと多いとラクですが、しかし、雑誌に頼る店にしていたら、きっとつぶれていたでしょう。ただ少しばかり、人文書、文芸書の気になるところが置いてあって、それをひいきにしてくださる方がいる。仕入れの際はデータではなく、“あの人が好きそうだ”と、いつも常連さんの顔が浮かびます。喜んでくれる人がいるから、そして自分も本屋という仕事が好きだから、ほんとにそれだけです。

往来堂書店(東京・千駄木
 ファンが多い有名店。名物企画「D坂文庫」は、常連さんたちにオススメ文庫のレビューを書いてもらって並べる。

山陽堂書店(東京・表参道)
 昨年創業120年を機にリニューアル。3階はギャラリー。谷内六郎の壁画は表参道のランドマークとなっているそう。63年から、黄色い背景に赤い風船の絵。75年から現在の「傘の穴の一番星」。

信愛書店(東京・西荻窪
 昭和9年創業。営業時間、10:30〜24:00、休みは正月元旦だけ。

 棚が個性的ですね、とよく言われるんですが、突っ走っているつもりもなければ、読者を引っ張る、なんて不遜な気持ちも毛頭ありません。お客さんがどんな本を求めているかを考え、わずか14坪の小さなスペースをどう活用するかを計算すれば、これしかない、というかたちになってきます。(原田社長)

〔インタビュー〕又吉直樹「人でも学校でもない。本屋で自分の地図ができました。」
〔対談〕 岡崎武志×小山力也 「古本屋は、いつだってあたらしい」
 
 関西では、京都のガケ書房恵文社一乗寺店。古書もある。
 東京新刊書店3店のうち、往来堂さんには一度おじゃました。何年前だ? 次回上京できたら、ぜひ行きたい。
〔対談〕で神戸の古本屋話も。岡崎さんが、トンカ書店ちんき堂を取り上げて、ついでに【海】まで言及してくださっている。トンカさん、ちんきさんにも教えてあげました。
【トンカ】感涙。
【ちんき】「そら、3軒ともアカン、いうこっちゃ!」
【海】ただ感謝。
(平野)
山本善行『定本 古本泣き笑い日記』(みずのわ出版)、サイン本入荷。お早めに。
本の紹介は明日。
「全国書店新聞」12.15号「うみふみ書店日記」最終回です。読んでくださり、感謝いたします。
http://www.shoten.co.jp/nisho/bookstore/shinbun/news.asp?news=2012/12/15