週刊 奥の院 12.6
■ 万城目学 門井慶喜 『ぼくらの近代建築デラックス!』 文藝春秋 1550円+税
2010年2月から5回に分けて、大阪、京都、神戸、横浜、東京の名建築探訪。
神戸では、兵庫県公館、ムスリムモスク、うろこの家、御影公会堂、商船三井ビルなど10ヵ所。
おふたりの作品を読んでいないので、キャラがわからないのですが、万城目がボケ役を演じて、門井の知識を引き出していくという感じです。大阪から。
「大阪市中央公会堂」
中之島は大阪を代表する近代建築が並ぶ場所。
(万)中でも中央公会堂を門井さんが薦める理由は何ですか?
(門)要するに、日本一立派な文化会館があると。
(万)ああ、なるほど。今日もオバちゃんたちが歌謡ショーをやっていますね。こういう名建築が、日常的に市民によって使われているというのは、すごい。
(門)この手の会館というのと普通はハコモノの典型で、いかにも景気対策で作りましたといわんばかりの愛想もへったくれもない建物が全国にあふれているでしょう。ところが、大阪にはこんな立派な会館がある。(金主が株の仲買商・岩本であることを解説)
(万)大阪商人には、がめつくてドケチというイメージがありますが……。
(門)刹那的な金もうけの勢いで建てちゃうというのも、大阪人らしいといえば大阪人らしい。(岩本は相場で負けピストル自殺。ビル落成式には未亡人と4歳の娘が出席)
「難波(なにわ)橋のライオン彫刻」
万城目がライオンを天満宮の狛犬の役目のようであると。門井は東京三越のライオン像を例に流行の時期があったのでは推理。
(万)吉幾三が上に乗っかって歌ってた(笑)
(門)つまりあのライオンは東京の象徴なんですね。それに対して、花の大大阪を象徴するのがこの難波橋のライオン像といえるかもしれない。
「高麗橋野村ビルディング」
設計者は安井武雄。東大卒業制作は和風建築。
(万)かなりの自信家だったんでしょうか。
(門)そうとう出来たらしい。ところがとにかく変な人で、人のやることは絶対にやりたくない。人が西洋なら自分は和風。結局、それが教授の勘気に触れ、満洲に飛ばされちゃう。
(万)昨年末(2009年)のM−1グランプリのことを思い出します。優勝を目前にした「笑い飯」が、最後のネタで、「チンポジ、チンポジ」と下ネタを連呼して、すべてをぶち壊したのと同じでしょうね。
(門)通じるものがありますね。(安井の満洲での活動、帰国して「大大阪」を象徴する仕事を紹介)
万城目、野村ビルの1階にチェーンのカフェが入っているのを、
「ファッションセンスのすごくいい男が安物のビーチサンダルを履いているよう……」
とも。
(平野)