月曜朝礼 新刊紹介

【文芸】 クマキ
■ 湯川豊 『本のなかの旅』 文藝春秋 1400円+税

さあ、この人たちと一緒に旅に出よう
旅をせずにはいられない「歩く人びと」が書き残した、旅の本をめぐるエッセイ。


 作家・詩人だけではなく、学者・登山家も。

宮本常一  歩かなければ見えないもの
内田百輭  用事がないから汽車に乗る
開高健  永遠に、幸わせになりたかったら
アーネスト・ヘミングウェイ  川には鱒がいて
柳田國男  「なにヤとやーれ」の歌声
イザベラ・バード  東北へ、もっと奥地へ
アーネスト・サトウ  時代の空気
……全18人。
 
 吉田健一は、「旅行が好きな余りに、このごろは行商だとか、どこかの会社で出張ばかり命じられている社員だとかで暮せたら……」(「人間らしい生活」)と書くほどの旅行好き。しかし、彼にとっての旅は、「飲食の楽しみがあってこその旅」で、旅行記のような文章はわずか。
 

自分の旅する時間を、その時間のなかに現われる稀な充実感を、大切にしていた。……
私は吉田健一のそういう時間の断片的スケッチを小さなエッセイなどに見つけて、もう少し読みたかったなあと、溜め息をつくばかりだ。以下はティポペペというシェリーを語った一節である。
《……普通のシェリーと違っていて、このあるかないかのはっきりといえない味と微かな匂いの酒を前に置いてホテルのラウンジとか、料理屋の隅とかにいると、英国のいつまでたっても暮れない夏の日が更に金色の光を増し、公園の木の緑がいっそう影が濃いものになる。》(「ロンドンの味」)

 著者は元「文學界」編集長。『須賀敦子を読む』で読売文学賞

■ J・K・ローリング著 亀井よし子訳 『カジュアル・ベイカンシー  突然の空席 Ⅰ・Ⅱ』 講談社 各1500円+税


(帯)
一見のどかなイギリスの町パグフォード、
ある男が40代の若さで死んだ。
その死をきっかけに立て続けに起こる事件の連鎖。……

ハリー・ポッター』の著者。今回はファンタジーではなく大人向け。だが、テーマは同じ。「人はどのように生き、どのように死に立ち向かうべきか」。
「カジュアル・ベイカンシー」とは「偶発的な空席」。死者が出て、突然、議席に空きができたときに使う用語。
 死んだ男は地方議会の議長。その席に誰がすわるか、小さな町の人間関係が崩れていく。
「作家として自分が書きたいこと、書く必要があることを書いた」(「朝日新聞」12.3 インタビュー)
(平野)
 呑み会のため順延。東京からUさんを迎えて「かっぱ横丁」。女子5人、男子1人、おっさんも3人。