週刊 奥の院 12.4

■ 芝田真督 『神戸 懐かしの純喫茶』 神戸新聞総合出版センター 1200円+税  

(本書のきっかけは?)……カフェやファミリーレストランが増えるにつれ、徐々にその姿を消しつつある「純喫茶」、それは移りゆく都会に残された最後のオアシスとなっていること。地元の人達に長い間愛し続けられている「純喫茶」、昔懐かしの「純喫茶」を訪ね、その店の歴史や魅力を紹介するとともに、貴重な文化として記録にして後世に残しておきたい……


 日本最初の喫茶店については諸説あるそうだが、神戸元町通3丁目の茶商「放香堂」が明治11(1878)年に販売し、さらに「コーヒー牛乳」を考案したのが最初らしい。【海】のご近所さん。また、神戸港はかつて輸入コーヒー豆の7割を陸揚げしていた。【海】の第二代社長は当初コーヒー輸入の仕事をしていた。
 本書、喫茶店64店舗を収録。ご近所さんを並べてみる。
 はた珈琲店 元町通5丁目、昭和53年創業。自家焙煎、5種類のオリジナルブレンド
 茶房ウィーン 元町通4丁目、昭和32年創業。焼き立て玉子のサンドイッチ。
 漫画と珈琲ポエム 元町通3丁目。45年続けた創業者引退して、若い人が引き継いでいる。
 舌れ梵(とれぼん) 元町通3丁目、昭和50年創業。ハニートースト(200円)がおすすめ。
 エビアン 元町通1丁目、昭和27年創業。関西で初めてサイフォン式を出す。
 元町サントス 元町通2丁目、昭和35年創業。名物はホットケーキ。

……人はどうしてそこに行くのでしょうか。そこは一杯のコーヒーを通じて店主や常連客とおしゃべりができ、明日への活力を生み出すオアシスに他ならないからでしょうか。
 どの店の店主も「お客さんにお会いできるのが励みになり、うれしい」と採算を度外視して営業をなされています。いつまで店が持ち堪えるかは神のみぞ知ることです。店が無くなってからでは遅い。本書で紹介した店は、たまたまご縁があったということです。……

雑誌
■ 『BRUTUS』12.15号 マガジンハウス 619円+税 
特集 文芸ブルータス

文芸とは、言語によって表現される芸術の宗匠です。いつの時代も、言語で綴られる物語は私たちを夢中にしてくれます。……

 文芸誌8誌が11編の作品を提供。雑誌によっては自分のところより先に。 

en-taxi  ●木内昇「俊輔」(先行掲載)  ●西村賢太「形影相弔」
オール讀物  ●有川浩「みとりねこ」(先行掲載)
群像  ●舞城王太郎 「私はあなたの瞳の林檎」
小説新潮  ●伊坂幸太郎「濡れ衣の話」
小説すばる  ●朝井リョウ「世界地図の下書き」
新潮  ●絲山秋子ニイタカヤマノボレ
文藝  ●いとうせいこう「私が描いた人は」  ●鹿島田真希「波打ち際まで」
yomyom  ●万城目学「悟浄出立」

 他に、「豊崎由美×高橋源一郎」など対談5本。文藝ガイド「新作が出たら読みたい作家32人」など6編。コラム多数。

■ 『雲遊天下』 111号 ビレッジプレス 500円+税 
特集 なくなったもの
「スクラップ&ビルドの街でつながりを生み出す」 大竹秋子インタビュー 南陀楼綾繁
「大衆食堂から見るなくなったもの」 遠藤哲夫
「失われた名画座、失われる名画座」 のむみち
「上京して二十三年で失ったもの」 岡崎武志

■ 文藝別冊 『総特集 中島らも 増補新版』 河出書房新社 1200円+税 
 増補分。
漫画 『南海の死闘 キリスト対シャカ』(『バトルロワイヤル』JICC出版局 1985年)
インタビュー 『憂鬱とお笑いの星の下に』(「ユリイカ」2004年5月号)
座談会 『「らもトリップ」から見たらも』 佐藤宙信×諸田創×山口文子×三間旭浩(2012年10月11日)
 本年は「らも生誕60年」。
(平野) 「月曜朝礼新刊紹介」は明日必ず。