週刊 奥の院 11.22

 
■ 会田誠 『美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか』 幻冬舎 1600円+税
 1965年新潟県生まれ、画家。最新の個展「天才でごめんなさい」(森美術館、東京、2012年)。

http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/index.html
 本書はエッセイ集。
北京でCM俳優をやった件  僕のみみっちい「ユリイカ!」 
靄の中のジャンボ旅客機……  北京で憂国
公開制作はもうイヤだ!  俺様ファッション全史
二十歳の頃の糞作品  二十歳のころの糞作品 他

 表題エッセイは、

 前回は国家とか経済とか、そんな低俗な話を書いてしまったので、今回はもっと高尚な話がしたい。すなわち僕の専門分野であるところの、美について――
 美といえば、とりもなおさず女性の胸である。もっと限定して言えば、大きからぬ胸、すなわちペチャパイである。

 という文言で始まる、文字通り「乳房論」。
 エロおじさん的視点、数々の観賞と接触、生物学、哲学……を通して深く考察する。
 そして、得た結論は、
「乳房は無常である――。」
 詳細に紹介するのは恥ずかしい(?)ので、最後の文章だけ。
 

 他の哺乳類に戻ったつもりで冷静に考えれば、乳房なんてただの一器官に過ぎない。それはそもそも交配する雄のためのものではなく、その結果生まれた子にしばらく栄養補給させるための、あくまで機能的な器官なのだ。なのに僕にはなぜ、それがあんなに美しく感じられるのか。いや、そんな言い方では足りない。なぜ乳房は僕にとって頑迷にも、美という概念そのものの極点であり続けるのか。
 文化などという腹の足しにもならないものを持ち、視神経と指先に最も繊細な感覚が集中してしまった変わった生物である人類の、その雄であるところの僕としては、以上のことをすべて引っくるめ、こう叫ばずにはおれない。
 美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか!

 視覚と触覚の葛藤。
 著者直筆落書き入り。
  
 (平野)
 月亭可朝師匠がかつて歌った。
♪ボインは〜赤ちゃんのためにあるんやで〜♪
 スケベおじさんは、「大理石」拒否します。