週刊 奥の院 １１．１９

■　黒川創・編　『福島の美術館で何が起こっていたのか　　震災・原発事故、ベン・シャーンのこと』　ＳＵＲＥ　２３００円＋税　
　ベン・シャーンは、１９５４年アメリカの水爆実験で被曝した第五福竜丸乗組員を描いた作品「ラッキー・ドラゴン」で知られる。　

　どんな災厄のなかでも、人は、美しいものを求める。苦しみが重なるときには、なおさらであったろう。たとえ戦火の下でも、展覧会はほそぼそと開かれていた。やがて、戦争が終わると、食糧不足が深刻な町で、新しい潮流を求める美術展がいっせいに湧き起こる。喉の乾きを潤すように、人々は、それらの会場へと足を運んだ。

　
　２０１２年７月、福島県立美術館「ベン・シャーン　クロスメディア・アーティスト」展での黒川の講演と学芸員たちとの座談会のもよう。

序文　何をしたいと思って、そこに出かけたか
第１章　持続する問いの人、ベン・シャーン　　黒川講演
第２章　震災と原発事故の経験
第３章　やってきたこと、やっていくこと

　この美術館にはベン・シャーンの作品がコレクションされている。黒川は６年前、そのコレクションを見るために福島を訪れた。その時、阿武隈川を見、町の景色を楽しみながら、歩いた。大震災と原発事故の後、テレビなどで映る町の映像と、記憶にある町の風景が重なるまでに１年ほどかかったと。
　座談会では、美術館、学芸員それぞれの震災と原発事故での体験、その後の修復作業について訊く。
「ベン・シャーン」展は各地を巡回したのだが、一部の作品が福島にだけ貸し出し「拒否」という報道があった。その真相についても明らかにする。
　福島県立美術館　http://www.art-museum.fks.ed.jp/menu_j.html
「ベン・シャーン　クロスメディア・アーティスト」展
http://benshahn2011-12exh.info/
展示作品の一部は、　http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/benshahn/sakuhin.html

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（平野）