週刊 奥の院 10.7

■ 赤坂憲雄 『3・11から考える「この国のかたち」 東北学を再建する』 新潮選書 1200円+税
目次 
序章
新章東北学 歩きながら考えた一年の記録
東北学第二章への道
1 東北に刻まれた近代の「夢」  野蒜〜松島湾
2 海辺の幽霊譚 『遠野物語』を手に、宮古から山田、大槌、田ノ浜へ
3 縄文の痕跡、命の循環  南三陸町鹿踊りと海辺の心性
4 泥の海へ、あらたな入会地の思想へ  南相馬市小高
あとがき

……三・一一から数えて一年と五ヵ月足らずが過ぎたが、被災地はどこも復興からははるかに遠い。とりわけ、福島の惨状は前向きに生きようとする心を萎えさせる。見えない放射能の影のもとで、依然として底の見えぬ不安に覆われている。十万人を越える「原発難民」が生まれてしまった。だが、原発事故の収束に向けての、説得力あるシナリオは、誰からも提示されていない。コミュニティ再建のための方策もまた、何ひとつ見出されていない。仕事を奪われた人々への、ほんとうの意味での支援となるべき、あらたな産業や雇用の創出など、夢のような話でしかない。巨大な責任放棄と、モラルの崩壊。こうして切り捨てられるのかもしれない、そんな予感に怯えている。
 だからこそ、草の根の実践が求められているのだ、と思う。

 学習院大学教授、福島県立博物館館長、遠野文化研究センター所長。「東北学」を立ち上げた山形を離れてすぐに「3・11」。精力的に執筆・講演を続ける。さらに東北各地を巡礼のように訪ね歩く。民俗学者だからフィールドワークは当然だが、

 断わっておくが、私はこれまで被災地で特別な調査やら研究といったものは、何ひとつしていない。ひたすら「歩く・見る」ばかりで、本格的には「聞く」にすら辿り着いていない。いつものことかもしれない。わたしはじつに中途半端なフィールド・ワーカーなのである。……
 これから十年、二十年とかけて、東北をもう一度歩き直しながら、東北学の第二ステージを構築してゆくことを、ひそかに願ったのである。

(平野)
「おかんアート展」本日18:30まで。尚、手作り教室は17:30で終了します。
下町おかんの作品、実物をぜひご覧いただきたい。