週刊 奥の院 10.3

■ 小田嶋隆 『もっと地雷を踏む勇気 わが炎上の日々』 技術評論社 1480円+税
 WEBマガジン「日経ビジネスオンライン」連載コラム。
 どんとこい、炎上! あえて地雷を踏む、覚悟をもって言論。
第1章 わが心は維新にあらず――Idiot Wind―― 
第2章 大津波はわが魂に及び――After The Gold Rush――
第3章 わが炎上の日々――Those Were The Days――
第4章 若者たちをよろしく――Take Care Of All My Children――

……民主政治というのは、効率や効果よりも、手続きの正しさを重視する過程のことで、この迂遠さこそが、われわれが歴史から学んだ安全弁なのである。
……民主主義は、元来、まどろっこしいものだ。
デモクラシーは、意思決定のプロセスに多様な民意を反映させるべく、徐々に洗練を加えてきたシステムで、そうである以上、原理的に、効率やスピードよりも、慎重さと安全に重心を置いているからだ。
 短気な人たちは、結果を待つことができない。
 彼らは「強力なリーダーシップ」や「スピーディーな意思決定」や「果断な実行力」を求める。
……民主主義の政体に果断さや効率を求めるのは、そもそもないものねだりだ。
 逆に言えば、それら(スピードと効率)は、民主主義自体の死と引き換えにでないと、手に入れることができないのだ。
……結局のところ、われわれは、全員が少しずつ我慢するという方法でしか、公正な社会を実現できないのだ。
……民主主義の多数決原理は、市場原理における淘汰の過程とよく似ているように見える。が、民主主義は、少数意見を排除するシステムではない。むしろ少数意見を反映する機構をその内部に持っていないと機能しないようにできている。だからこそそれは効率とは縁遠いのだ。

 第1章の2回分から引用。戦後民主主義で育った者にはごく当然のまっとうな話だ。「多数決」は多数意見に従うのだが、「できるだけ少数意見を尊重する」という原則を小学校時代に繰り返し教わった。多数の横暴は許されていない。
 大阪市の文化行政についても、著者の意見は明解だ。文楽について、無知で愛着もないが、
 

 文化や芸術に関わるときに肝要なのは、「自分の理解できないもの」に対して、いかに寛大であることができるかということなのである。なんとなれば、世界にある文化や芸術は、そもそも多くの人間にとって「皆目わからない」ものだからだ。……
文楽だけを特別扱いするのか」
その通り。
特別扱いにするのである。

 200年の歴史に対する敬意。 
 装画 杉浦茂「猿飛佐助」
(平野)
【海】のこと、見ている人は見ている。こんなところも……
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 棚と本のサイズを考えて、いろいろ詰め物をしていて、筒井さんまで動員していたとは……。他にもレア物があるかもしれない。