週刊 奥の院 9.24

■ 金益見(きむ・いっきょん) 『性愛空間の文化史 「連れ込み宿」から「ラブホ」まで』 ミネルヴァ書房 2000円+税
 神戸学院大学大手前大学講師、08年『ラブホテル進化論』(文春新書)。 
序章 ラブホテルのルーツ
第1章 連れ込み旅館の成り立ち 1「連れ込み旅館」に至るまで  2普通の旅館から連れ込みへ  3「連れ込み」の目印
第2章 モーテル(モテル)の誕生と衰退  1アメリカのモーテル  2日本のモーテル  3類似モーテル
第3章 ラブホテルの隆盛  1デラックス化されたラブホテル  2女性が喜ぶファッションホテル
第4章 ラブホの現在  1「ラブホ特集」の影響  2ラブホの現在

 冒頭、いわゆるラブホテルと呼ばれる、男女のカップルが宿泊・休憩する施設の呼称をあげる。1951年から現在まで雑誌に登場した名称、「温泉マーク旅館」から「ラブホ」まで48。

……現在、日本にはラブホテルと呼ばれている施設がある。ラブホテルとは、宿泊できる貸間産業の一つであり、おもにカップルが利用するための密室空間を提供している施設である。しかし、カップルが利用するための貸間が、ずっとラブホテルという名称だったわけではない。日本人の性意識の変化や、外観やサービスの変化に並行しながら、カップルのための貸間の名称は変わっていった。姿、形は変わっても同じシステムや機能を持ったカップルのための密室空間が、なぜ時代によって、受け入れられ方や認識が違ってきたのであろうか。
 本書では、これらの貸間産業をラブホテルと表記する。ここでのラブホテルは、政令で定められている「風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律(風営法)」においての定義ではなく、「一定時間をひとつの単位として場所を切り売るセックスもできる宿泊可能施設」をその定義としたい。……  本書は関係者への聞き取りと、広告の変遷をもとに、ラブホという呼称が生まれるまでのラブホテルの変遷を明らかにすることを目的とする。……

 先行研究も少ないながらある。参考にしながら、著者は週刊誌・スポーツ新聞等の広告に注目する。広告には、必要とされた情報、またホテル側のアピールが顕著に表れている。
 1946年復活した「大阪日日新聞」の広告欄から。
 温泉マークを掲げた旅館の広告。
「御手軽ナ温泉料理〜、閑静優美ナル小室多数有〜」
「天下の名勝宝塚に大殿堂の出現〜」
 結婚や宴会と共に「商談」も、とある。芸者・仲居の募集しているところもある。
 著者の推理。
 小室多数、商談可能ということは、暗に連れ込み利用可能と謳っているのではないか。また、芸者・仲居(25歳までと制限)募集は、女給として客の相手をさせていたのではないか。「商談」可能、商談は一人でするものではないし一晩中するものでもない、「一人以上」の客に「時間貸しする」ということ。
 同じ新聞に老舗温泉旅館の広告もある。温泉マークはあるが、文面は「インフレ抑制価格、気分満点」。のちに「大小集会ト家族向」と変わる。その後は必ず「家族連れに」と記載されている。この旅館はレジャー施設で、広告には「家族」と記載しなければ「連れ込み」との区別がつかないからと、考えられる。
 若者向けタウン情報誌に、「堂々とラブホテルが取り上げられたのは、1994年の『ぴあ関西版』である」
“快適超夜遊びスポット”特集のなかで、「レジャーホテル」と紹介。
 当時の編集者に取材。実験的に違う特集の中のテーマの一つとして組み込み、読者の反応を見るため招待券・割引券のプレゼントをつけたところ、応募ハガキが予想よりも多く、絶対売れる、と。編集長は躊躇したらしいが、翌年、特集「行列のできる♡ホテル」が組まれる。通常号より3万部増の売り上げだった。当然「お叱り」があったが、注文殺到で社内での評価は変わる。ホテル情報だけのムックが定期的に出版され、「ホテル事業部」ができ、04年には独立してラブホテル専門の広告代理店になった。
 ホテル側も、最初は戸惑った。しかし、経営者も2代目など若い人に移っていて、ラブホテルのイメージを変えたいという思いがあった。これまでの雑誌では特殊な構造や豪華な設備が取り上げられたが、綺麗さ・清潔感を発信する『ぴあ』と一致した。

……情報誌の影響で、ラブホテルは一般の利用者にとって身近な存在になった。また、ラブホテルも人目に触れるようになり、企業努力するようになった。
「ラブホテル」を「ラブホ」と表現するようになった情報誌によって、ラブホテル=セックスという考えから、ラブ=デートという意識が加わった。そして、「セックスをする空間」は「セックスもできる空間」に変化を遂げたのである。

 ラブホテル年表もあり。
(平野)
 著者のプロフィール写真、おじさん、うっふん、です。私、名刺交換したもんね。GFとはまだ言えぬ。

◇ 【海】のイベント
 「おかんアート」が帰ってくる!
■ 神戸下町 おかんアート展 2012 まもる編
10・6〜7 11:00−18:30 2Fギャラリースペース 入場無料 手作り教室は参加費500円(要予約・お菓子付)

 
  
【おかんアート】 主催:下町レトロに首っ丈の会 

 それはおかん(母)が作った芸術作品。どこの家にも1つや2つはある隠れた秘密兵器。いくらお部屋をfranc−francやIKEAでトータルコーディネートしても、この子を1つ置くだけでたちまち「ゆる〜い空間」に早変わり。毎日のストレスでのイライラも、この子を見ると、怒りすらも忘れてしまう癒しの脱力兵器なのです。
 母は一生懸命につくります。ヤクルトのカラやウィスキーの空瓶、使い道の無いリボンを見ては、新たなおかんアートの素材として工夫を凝らします。そしてエコな作品がまた1つ誕生。そう、それは時代の最先端を行く芸術。神戸の下町、兵庫区・長田区のおかあさん達の愛くるしい作品から、おとうさま達の作品「おとんアート」も大公開。
 今回は、地域の至宝でもあるおかんアートやおとんアートの「巨匠」から直々に作り方を伝授してもらえるおかん+おとんアート手作り教室も多岐にわたり開催します。茶菓子でほっこり喫茶スペースや、おかんアート市も常設します。芸術の秋、自分の中に眠っている「手作りごころ」に火をつけるべく、是非ともお誘い合わせのうえお越しください。

 「手作り教室」予定
10・6(土)
11:00〜17:30 
余枡さん「指の入るアクリルたわし」  
香坂さん「さるぼぼ」・「おしぼりタオルで犬を作っちゃおう」・「ラメ入りしじみストラップ」
尾本さん「淡路結びの5円玉の亀」 
金口さん「折り紙手芸動物」
10・7(日)
11:00〜12:30 小林さん「カラフルアクリルたわし」
11:00〜17:30 伊藤さん「軍手とヤクルト人形」
12:30〜13:30 上田さん「ふくろうのハサミ入れ」
13:30〜17:30 星川さん「牛乳パックの書類整理ケース」
14:30〜17:30 秋本さん「折り紙立体おもちゃとドラえもん
15:30〜17:30 高木さん「箸のストラップと木のパズル」
15:30^17:30 香坂さん「お絞りタオルで犬を作っちゃおう」

 各教室10名限定、要予約。時間注意。 
お申し込みは、おかんアート展事務局「淡路屋」TEL 078−671−1939   メール citamatiretro@yahoo.co.jp まで。
【海】とちゃいます。