週刊 奥の院 9.23

■ 内田樹×名越康文×西靖 『辺境ラジオ』 140B 1500円+税 
 MBSラジオの不定期放送番組。
第1回 2010.11.14 守るにせよ、崩すにせよ、「定型」はやっぱり大事。
ハエが手をする理由 科学者の宿命 人間と自然 家族とはロールプレイング 「型」の偉大さ 見えないものの追究 他
第2回 2010.12.26 2010年の重大ニュースをふり返る。
誰が喋っているかわからない ウィキリークスの功罪 ツィッターの排他性 身体性を公開するメディア 口蹄疫に思う命の儚さ 大阪は元気がない?
第3回 2011.3.6 大阪を元気にするには、「うめきた大仏」しかない。
ホウレンソウは要らない 民主党の薄っぺらさ 政治家に必要な器量 辺境は政治家の名産地 「元気」の意味大阪が陰りつつある 他
第4回 2011.5.8 被災地に向けて、大阪ができることは。
狂った時間感覚 原発停止フライイング発言 官僚は真のナショナリストか 原子力行政の無理解 政治家はおばさん感覚が大事 他
第5回2011.7.22 立ち止まり、祈ることから始める、震災後の新しい生き方。
どうしようもない状況に立ち向かう 傷ついた人のために祈る 偏差値が同調圧力を生む もっと知性に敬意を 子供の胸の内が言葉になる時 原発供養「ごめんね、原発」 他
第6回 2011.12.25 下り坂にさしかかった日本で、機嫌よく生きるために。
2011年と2012年はワンセット サンデル教授の無自覚 ディベートの落とし穴 考える時の時間の尺度 保留を恐れるな 日本が示す新しいモデル 他
〈番外編〉 2011.9.3 おせっかい、アハッ!ラジオ 内田×茂木健一郎×西

 第1回から。

(西)……アメリカや中国ではなく日本の、そして東京ではなく大阪の、もっと言えばテレビではなくラジオの、つまり中心ではなく辺境だからこそ見える時事ニュースの意味を探ろう、語ろう、そんな番組でございます。……新聞記事をきっかけに、「これはどういう意味なんだ?」でもけっこうですし、「なぜあのことを書いてないんだ?」というご指摘でもけっこうです。……

 で、名越が気になった記事、「『ハエが手を擦る足を擦る』はなぜか」(同年11・10「朝日」より)から話が始まる。
 生物の生存戦略、自然における人間のポジション、教育、親子、「定型」の美しさ、「見えないもの」の追究、エリート教育、階層化、教育政策、子供の成長……。
私の要約では話がわからんでしょうが、つながるんです。でもね、
「定型の美しさ」と言いつつも(西)、……結論がない(内田)、それはもう最高ですよ(名越)…… 結論など出なくてもいい。
 第3回が、またすごい。「うめきた大仏」の話。リスナーの提案。
 

私が大阪で気になるのは、一つは都心の緑の少なさ。人を案内する時の観光地のなさ。なので『うめきた』の緑地化自体には大賛成なんですが、もっと積極的に、あそこに大仏を建てるぐらいしてほしいんです。

 内田、大賛成。人の住むところには霊的な呪鎮が必要。もともと大阪には石山本願寺四天王寺という巨大な霊的センターがあったが、信長が本願寺を壊したせいで大阪の霊的布置が狂った。霊的エアポケット「うめきた」エリアに大仏を建てれば、生き返る、と。
「霊的」というのを、オカルトととらえてしまいがちなのだが、祀るとか祈るとかで人の気持ちは安心する・落ち着く、というくらいに私は考えている。
うめきた」といってもヨソの土地の人には理解しにくい。JR大阪駅北側再開発。商業施設、オフィスビル、病院や学校、住宅もできるそう。またドでかいビルが出来るだけでしょ。緑地化、競技場を作る案も。

(内)「うめきた」を門前町にしちゃいましょうよ。
(西)ということは御堂筋がぜんぶ門前になるわけですわ。
(内)「うめきた」開発についての検討委員会では、誰もこんなこと言わなかったんだろうなあ。
(西)すぐに経済効果を気にするビジネスマンが聞いても、意味がわからないでしょうね。
……

 提案者による大仏完成予想図もある。プロの漫画家。
 初詣客で100万人規模。その人たちが、食事、買い物、映画……。
 縁日に月参りにお祭りに盆踊り、墓参りもある、冠婚葬祭で毎日がイベント状態。
 実現困難でしょうが、提案者も三人も都市それぞれの個性的な固有の文化を考えてのこと。どこに行っても高層ビル、同じ商業施設ばかりのほうが変。
 紹介したい話がたくさんあるが、ひとつ。

(茂木)……僕はイギリスに長くいたので、保守主義は基本的にいいことだと思っているんですよ。(国境紛争の認知神経科学を研究中、世界初らしい)……国境紛争の特徴は、二つの国があった時に、どちらの国も自分たちが正しいと信じきっていることなんですよ。自分の国が領有権を主張している場所があり、相手はそれを認めないで「お前たち、オレの言うことを認めろよ」「態度を変えろよ」と言うでしょう。でも、自分だけじゃなくて相手側もそんなに変わるはずはないと認めるのが本当の保守主義者だと思うんですよ。(話は国歌にも及ぶ)……僕も歌うし起立するけれど、しない人がいても、「この人はそういう風になっているんだな」と思って強制しない。そんなことは無理だと思うから。勉強しない子に「勉強しろよ」と言ってもなかなかしないのは、世のお母さんならみんな知っているでしょう。

(平野)