週刊 奥の院 9.9

■ 『kotoba』 2012年秋号 特集:日本語を「あそぶ」 集英社 1333円+税

漢字、ひらがな、カタカナ等で表現されるコトバを駆使して   
日本人は生活を彩り、他人と交わり、独自の文化を築いてきた。
知られざる漢字の成り立ちから韻文の楽しみ方、
辞書の面白い読み方、方言、駄洒落、回文などのコトバ遊びまで、
日本語を縦横無尽に遊び尽くす。

谷川俊太郎 「あそび」のある言葉の大切さを知ること
1 日本語とは何か  鈴木孝夫 齋藤孝 外山滋比古 柳瀬尚紀
2 日本語のできるまで  笹原宏之 山口謡司 橋本治
3 辞書を楽しむ  永江朗×サンキュータツオ 北原保雄 中村明
4 五七調の小宇宙  金子兜太 復本一郎 中原道夫 穂村弘 筑紫磐井 乙津理風
5 日本語のあそび方  黒川伊保子 小野正弘 武田双雲 岩崎均史 ながたみかこ
6 変わりゆく日本語  松本修 田中ゆかり 宇多丸 石黒謙吾 小杉なんぎん
 
永江と対談するサンキュータツオは「学者芸人」。漫才師で一橋大学非常勤講師、専門は表現論、文体論。
テーマは「岩波VS.三省堂 国語辞典の二大潮流を探る」

タツオ〕……僕が一番好きなのは序文の読み比べです。『岩国』(岩波国語辞典)第七版の序文なんてカッコいいですよ。「この辞書が視野におさめるのは過去百年の(一時的流行ではない)言葉の群れである。それゆえごく最近の新語・俗用にはかなり保守的な態度となる」とパシッと言っている。
 この「保守っ!」という感じ、たまりませんね。キャラクターづけするなら『岩国』は「シティボーイの秀才」という感じでしょうか。……
 対する『新明解国語辞典』は「地方出身の秀才」みたいな、野原を駆け回って用例を集めている感じがします。ついでに言うと、小学館の『新選国語辞典』は「理系キャラ」ですね。というのも、巻末に語種別分類が円グラフで載っている。これは国語辞典の世界では事件でした。『集英社国語辞典』は「帰国子女キャラ」。この辞書の特徴は横組みの版があることで、今のところ横組みを出しているのは集英社だけです。『旺文社国語辞典』は完全に「萌えキャラ」です。小型辞典の中で一番小さくて、デザインもかわいい。持った感じも最高です!
広辞苑は?)
 小型辞典と単純に比較できませんが、「オタクのお兄ちゃん」みたいな感じですかね。……

広辞苑』20万語のうち14万語が専門語で、一般語6万語は小型辞典と変わらないそうだ。
 さらに、各辞典の序文や付録、収録する言葉についての方針も比較する。

 特集以外では、姜尚中インタビュー、「第10回開高健ノンフィクション賞」発表、佐野眞一「英霊」か孤児(みなしご)か など。
(平野)