週刊 奥の院 8.24

 今週のもっと奥まで〜
■ 小玉二三 『旧家の女(ひと)』 光文社文庫 590円+税
 農村の旧家に民俗学研究の院生が聞き書きに。応対した菊乃夫人が語る因習と“隠れ里”。彼女はかつて教師としてこの地に赴任。三刀谷(みとや)家の当主・勇一に見初められ結婚する。初めて招かれた日、結婚の意志を相撲で決める儀式。女が勝てば結婚。見え見えの八百長で結婚の儀終了。婚礼の夜、勇一が語る。

「小さな集落だからね。昔は村だった。赤乳村。だから結婚を断っても、先方とは、後々も近所で顔を合わせる。その時のきまずさを軽減するために、あんな相撲で互いの返事とする。昔の人の知恵だよ、きっと……」 
「前の奥様とも……相撲を取ったのね」
「本気で取ったら、僕が負けたんだ」
笑いの混じる声で勇一はそう言うと、寝床の中でむくりとこちらに寝返った。菊乃は緊張を新たにした。
「あっ――」
……
(しかし、間もなく夫の浮気現場を目撃。実は家に「脇妻」と呼ばれる側室が同居、しかも3人も。神社の氏子総代も務めて、敷地内からは毎夜お神楽の音が聞こえてくる。祭りの終わった夜、脇妻のひとり舞が菊乃を誘う)
「一緒に来ますか?」
「どこへ」
「祭りです。これからがたけなわですから」
(芸能保存と脇妻の真の役目について話してくれる。そして祭りの秘密も)
舞が導いてくれたのは、なんと一昨日まで菊乃が就寝していた棟の座敷牢の中だ。
「ねえ、舞さん……このお神楽どこから聞こえてくるの」
「これから、そこへいきましょう。……奥の院とは、よく言っています」
(山の奥、鍾乳洞のさらに奥)
「何をしているの、あの人たち」
「祭りをしているのですよ」
 舞は静かに答えた。
……

 女だけの“隠れ里”。
(平野)
 岐阜、美女の古本屋(お世辞じゃなく、心底思っておりますです、でしょう……、いや、ほんま)徒然舎。
http://mytown.asahi.com/gifu/news.php?k_id=22000001208170002