月曜朝礼 新刊案内

【文芸】クマキ
■ 志村ふくみ 『晩禱  リルケを読む』 人文書院 2800円+税
1924年滋賀県生まれ、染織家、エッセイスト。 

目次
巡礼 私は感ずる、できる――時禱詩集 ロシアへ 若き修道僧リルケと共に キエフ地下聖堂の祈り より貧しくあれ
ロダンに会う
孤独と絶望からの再生――マルテの手記 巴里 行き止まりの露地  流れに逆らって
すべての天使は怖ろしい――ドゥイノ悲歌
 リルケの詩に魅せらる。しかし、詩の背後にある膨大な哲学・宗教思想などを理解しなければ読み込むことはできない。志村は1997年からノートに綴ってきた――詩が何を語り、訴え、自分が受けとめることができるのか。
 リルケの時禱詩集冒頭にある言葉を頼りにする。
その時 時が傾き、打ちならす晩鐘の 澄んだ響きに わたしは心をゆさぶられる。
わたしの感覚はうちふるえる。わたしは感ずる、できる、と――
そしてわたしは造形の日をつかむ。  時禱詩集 第一篇 

「わたしは感ずる、できる」が一縷の望みだ。リルケの詩集であるとか、最高の認識であるとか一切考えず、あの晩鐘の響きのように、魂にじかに、静かに浸みわたるものを求めたい。……

 リルケの詩に寄り添って、自らの内面に向う旅――巡礼に出る。
 装幀も志村。 

【児童】
■ 今森光彦 『世界のふしぎな虫 おもしろい虫』 アリス館 3800円+税
 1954年滋賀県生まれ、写真家。琵琶湖のアトリエで自然と人との関わりをテーマにする。 
 本書に登場する虫たちは擬態の名手(?)たち。実物大写真241点。
 30数年前、マレーシアの避暑地キャメロン・ハイランドで出会った「コノハムシ」。原住民の少年が持っていた葉っぱ。

……つぎの瞬間、私は、我が目を疑った。差し出された緑色の葉っぱが波間にただよう小舟のように、小刻みにゆれはじめたのだ。
 息もせずに凝視していると、その葉っぱには、フリルのようなものがついたあしがあり、さらに、複眼や触角までついていることがわかった。……
生身の虫の迫力に圧倒され、そのあと声が出なくなった。体のみずみずしさ、ほんの少し毛のはえたつや消しの感じからは、目の前でうごめいているすがたを見てさえ、木の葉でないことが信じられなかった。
(少年は手慣れたようすで虫を手の中で遊ばせる。太陽の光で虫の体の色が変化する)
……自然の中でしか見ることができない進化の妙。目をあざむくためだけに植物の葉になりすましているのではなく、彼らには小さいながらも独自の美学が備わっていて、そこにこそコノハムシの本質がかくされているように感じた。
 ほんのわずかのできごとだったけれど、擬態の天才たちとつきあうためのヒントをもらったような気持ちになった。……

 翌年今森は、少年の暮らす村を訪ね、いっしょにジャングルを探検した。
(平野)
すみません。リルケの詩を引用し忘れてました。志村さんの言葉「晩鐘」が何のことか、どこから引いたのか、わかりませんよね。