週刊 奥の院 8.20
■ 『花森安治集 衣裳・きもの篇』 LLPブックエンド 1800円+税
戦後間もなく「婦人公論」「美貌」「装苑」などに発表した“スタイルブック”を中心に、ファッションについての文章を集める。
目次
スタイルブック
【生活を明るくするためのデザイン】 1 新しいキモノ袖の美しさ 2 端布だけで作れる新しい手提袋 3 コドモ服はお母様の手で
美しいフードと手袋 雨の日に 夏のアクセサリ
……
【洋裁講座】 夏の部屋着は涼しく美しく ブラウスをたたえる
……
コラム・エッセイ 歪められたおしゃれ
【私たちのスタイル】
講演・談話・座談
花森安治の思想と生活 女の男装・男の女装
「女の男装〜」で、男女平等を服装から論じ、自らの経歴・考えを語る。第三者の立場からという体裁。
女性にズボンをすすめる花森に対する反論を紹介。反論氏は婦人たちから叱責され、花森はもてる、という話。
……彼(花森)はミーハア族から、ザアマス人種、「ひととき」婦人と、いろいろな階層に、一応あげつらいの矢を射るが、めざすところは「ひととき」婦人のもつ常識的知性と感傷に、キャンペーンすることにあるもののようだ。……
松江高校時代のエピソード、そのころから彼には女性を引きつける特殊の才能があった、文学青年ながら書斎にとじこもるのではなく、バンカラで酒場をわたり歩いてあちこちでもてた、大政翼賛会時代女性職員を厳しく指導するが皆彼の周囲に集まっていた……。女性心理のつかみ方・庶民性をアピール。
東大時代に考えた衣裳のこと、伊藤胡蝶園宣伝部でのデザインのこと、翼賛会での仕事ぶり、さらに戦後の転身まで自分で批評する。
……この「機械のように精密」な目的意識性が、時には「利口なやつ」「打算的」「チャッカリ」として人の目にうつり、またあるいは、女性には「冷たい人」と映ずるのかもしれない。
一口にいって、アイツは一体、どんな野郎なんでしょうねェ?
「ウーム…(苦笑)嫌な奴だねえ。やることなすこと、いちいち、鼻持ちならない。つまり、もう独りのハナモリとしては、大嫌いなんだ、あの花森安治って男」(爆笑)……
(平野)