週刊 奥の院 8.15

■ 福元満治 『出版屋(ほんや)の考え休むににたり』 石風社 1800円+税
 福岡の出版社・石風社代表。1948年鹿児島市生まれ。アフガニスタンで活動する中村哲さんの本で知られる。他にも、石牟礼道子渡辺京二黒田征太郎ら、九州に縁のある作家たちの本。
 カバーの絵は黒田。
(帯) 
出版屋のオヤジが どじょうや なまずのように
川の底から 世界を眺むれば、
そこには 何が見えるのか

1 私は営業が苦手だ
2 博多 バブル前後
3 石牟礼道子ノート
4 なぜかアフガニスタン
5 本が放つ九州・沖縄の磁力

 創業30年、編集者生活40年。これまでの出版活動をふり返る。

「私は書店営業が苦手です」(1997年)より
……あたりまえの話だけれど、書店には本を「読んでもらう」のではなく、「売ってもらう」のである。売ってもらうといっても、ただ単にお店から注文をもらい店頭に並べてもらうことではない。
……書店営業とは、書店に本を売る気になってもらうために必要な情報を提供(交換)することにある。書店は、版元の提供する情報と長年培った勘(データ)によって、仕入れの判断をする。だから、書店に対してその書籍の作品性についてのみ力説する事は、無意味ではないにしても実のある行為ではない。まして「この本は良心的な書評もたくさん出ました」などと強要するのは見当違いである。問題は商品としての可能性をいかに書店に納得してもらい、売る気になってもらうかである。そのための書評である。
……書評もたくさん出て、いかに優れた内容であるかなどと言い募ってみても、苦笑いされるだけだろう。おまけに書店は忙しい。接客で殺気だち、とても声をかけられないことなど再三である。
……ようやくタイミングを捉えて、この本は「類書とは一味違います。売れます」と商品としてのセールスに精力を注がねばならない。一喜一憂しながらこれを二、三軒繰り返すと、私の場合血中疲労度がぐっと上がる。やはり、私は書店営業が苦手だ。

(平野) 私は、出版社の営業さんが苦手だ。エエ齢していても苦手なものは苦手。