週刊 奥の院 6.28

■ 半藤一利 『日露戦争史 1』 平凡社 1600円+税
『こころ』連載。「昭和史の芽は幕末にあり」というのが“歴史探偵”の見解。今回は「日露戦争」。
(帯)
開戦直前までの政府・軍部の攻防と国民の熱狂―― 
日本を決めた、あの戦争の真実。
国はどのように戦争に至るのか?
人はなぜ戦争を始めるのか?
近代日本に決定的な転機をもたらした日露戦争を詳細に描く大作。

プロローグ 明治三十七年二月四日
第一章 日英同盟が結ばれた日
第二章 不可解! ロシアの背信
第三章 世論沸騰「断乎撃つべし」
第四章 対露作戦計画成れり
第五章 いざ開戦、そして奇襲攻撃
第六章 旅順港外戦と鴨緑江突破戦

 

 歴史には、あとは一瀉千里に突き進むよりほかはない時点があるのかもしれない。いわゆるノー・リターン・ポイント(引き返せぬ地点)である。
 戦前の昭和では日独伊三国同盟を締結した十五年(一九四〇)九月二七日がそれであったろう。それが明治時代にあっては、三十七年(一九〇四)一月十二日の御前会議がそのもはや引き返せないときであった、と思われる。……

1・12 御前会議。海軍大臣山本権兵衛が戦争不可避を奏上、政府の国交断絶案を提出。伊藤・山県・松方三元老が政府案の裁可を願う。天皇は「外交交渉をつづけてみよ」とは発言。
[半藤]「戦争へ向う懸河の勢いをとめることは天皇といえども不可能であったとみるほかはない」
「緊張は極度に昂まり、開戦のときを待つのみといった気分が横溢していく」
1・21「報知新聞」……近く来るべき日本と露西亜の戦は二十世紀の一大戦争なり。
1・27「東京朝日」……戦機は已(すで)に熟したり、然るに当局者の逡巡決せざるは国家を誤るものと認む。
1・27 ドイツ人医師ベルツの日記……かかる間に、日本はあらゆる方面の準備をなした。首相と蔵相は、すべての有力銀行の首脳を招致し、一億円の内国公債につき協定を遂げたのである。
2・1 参謀総長大山巖は天皇に日露の戦力を報告、開戦決断を上奏。
2・2 露西亜から最終回答なし。桂首相ら首脳は「一同遂に開戦の已むべからざる議決」。
2・3 午前露国全艦隊が旅順出港の知らせ。海相「戦機は正に迫れり。否、既に熟しきったり」。天皇、非戦論の伊藤に意見を聞く。伊藤「事ここにいたっては……」。
2・4 午後御前会議、対ロシア開戦決定。
天皇、「今回の戦は朕が志にあらず……事万一蹉跌を生ぜば、朕何を以てか祖宗に謝し、臣民に対するを得んと。忽ち涙潸々(せんせん)として下る。……」

 

 戦争は、天から降ってくるものではない。上御一人の天皇が「朕が志にあらず」と望まなくても、長い歴史的経緯をへて起るべくして起るのである。

 日露戦争の過程を詳細に調べる。まだ開戦。何巻になるか。
 只今、刊行記念「著者インタビュー」冊子(ビラ1枚)あり。部数に限りがあります。なくなったら御免。 
(平野)
 6・27集計「今週のベストセラー
1 文藝別冊 いしいひさいち 河出
2 おはようパーソナリティー道上洋三です ワニブックス
3 赤ずきん グリム昔話 フェリックス・ホフマン画 福音館書店 
4 惜櫟荘だより 佐伯泰英 岩波書店
5 野の花の本 ボタニカルアートと花のおとぎ話 海野弘 解説・監修 パイ・インターナショナル
……
 



 1と4は紹介ずみ。
 2は、大阪朝日放送ラジオの人気番組。
 3は、ホフマンが孫のために制作した手作り絵本。絵には下描きが残っている。ホフマン生誕100年と福音館創業60年記念出版。  
 5は、植物画、花からインスピレーションを受けたおとぎ話の幻想的挿絵、花の文様と装飾、230点掲載。オールカラー。

 

「ザ・ピ−ナッツ」のお姉さんが……。