週刊 奥の院 6.20

■ 横田増生 『評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」』 朝日新聞出版 1500円+税
 著者、1965年福岡県生まれ。予備校講師を経て、アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士。帰国後、物流業界紙編集者。現在フリー。
 02年6月13日朝刊に載ったナンシーの訃報、声に出して読んだ。
ナンシーに強い関心を持っている自分自身に気づいた
 きわめて薄いつながりがあった。ナンシーの名物連載がある週刊誌に3回だけ自著のダイジェストを書いた、というだけ。熱心な読者ではなかったが、亡くなったことをきっかけに少しずつ読み始めた。
 

 本を読み進めていくうちに、どうしてこんなおもしろい才能が生まれてきたのだろう、という興味が強くなってきた。どんなバックグラウンドを持って、どんな軌跡をたどってきたのだろう。どうやって三〇代という若さで「週刊朝日」と「週刊文春」という主要週刊誌二誌で長期にわたる連載を持つまでになったのだろうか。

 しかしおもしろいという思いと同時に、「隔靴掻痒というか、もどかしさも感じる」ようになった。例えばカラオケについて、正反対の気持ちを書いていたりする。
 彼女の文章を整理し、気持ちの変遷の背景など、裏付けとなる取材も加えて、魅力をさらに明確にする。
 目次
プロローグ
1 ナンシー関の才能とその影響力  宮部みゆきの場合、小田嶋隆の場合、山藤章二の場合 他
2 ナンシー関〉が誕生するまで  照れ屋のちょっと変わった女の子、初仕事、改行なしのコラム原稿、たけしの影響、消しゴムを彫って生きる覚悟 他
3 青森での関直美  子どものころから「大人」、実家でのナンシー、クラスの中の“最後の砦”、マツコとの鼎談、サブカルチャーに傾倒 他
4 旅するナンシー、歌うナンシー  香港でパーマをかける、ハンコとスタンプ台を持ち歩く、台湾社員旅行の過酷すぎるスケジュール 他
5 ナンシー関の全盛期  はじめての単行本、愛用の消しゴム、「噂の真相」での連載開始、見えるものしか見ない「顔面至上主義」、日常生活では「人の顔など見ちゃいない」 他
エピローグ
あとがきにかえて
主な参考文献  年表
全344ページ。
 ナンシーのコラムからひとつ。某アメリカ人タレント氏を批判、彼も反論、再びバッサリ!
 

 私がタレントを見る価値基準は『おもしろい』か『おもしろくない』かの一点のみだ。私はあなた(実名)を『おもしろくない』と非難したのだ。
(彼の反論を引用、『我々』としていることに、「一人で怒れ、何をオドオドしているのか」と)
 結局、『(こういう原稿を書くことを)ヤメロ』と言いたいらしいが、これは私の生業である。聞く耳持たん。……自分で言いたくはないが『芸』なのである、コレモ。あとさ、落とし込みたいとこに『太ってる』ばかり持ってこられてもねえ。私も昨日今日急に太ったワケでもないし。ま、ちゃんと読んでから怒ることだ。 (小耳にはさもう) 

(平野)
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 GF・Y子さんが南の島のお土産を持って来てくださった。ありがとう。皆で頂戴しますです。