週刊 奥の院 6.12
【文芸】 クマキ
■ レイ・ブラッドベリ サム・ウェラー 小川高義 訳
『ブラッドベリ、自作を語る』 晶文社 1900円+税
亡くなる直前に邦訳出版。
サムはブラッドベリ研究者。2000年以来インタビューを続けてきた。伝記『ブラッドベリ年代記』(河出書房新社)も。
よくしゃべるんだ。はっきりものを言う。生きる喜びにあふれている。いわば人間紙吹雪であって、色彩と運動エネルギーがお祭りになって吹き飛んでいる。政治や宗教、あるいは映画の現状、そのほか多岐にわたる話題で、ときとして議論を呼びそうな意見も言うけれど、ひるむことなく言っている。……
目次
ブラック・フランシスによる序文
まえがき
幼年時代の記憶 ハリウッド スター作家として
才人たちとの交遊 自作を語る 信仰について
芸術、書物の趣味 政治について 性の問題
創作の秘密 サイエンス・フィクション
幸福の追求 未来のビジョン
付録 『パリス・レヴュー』インタビュー ’76
索引含め400ページ超。
[ウェラー] 『たんぽぽのお酒』から『何かが道をやってくる』にいたるまで、そのはか短篇にもありますが、よく子供時代について書いておられますね。作品全体の中でも相当に重みのあるテーマになっています。これだけ何度も子供時代に回帰するということは、どんな理由があるとお考えですか?
[ブラッドベリ] 回帰というのは、つまり、自分の神話時代、根っこの部分に戻る、ということだな。ただ子供に返るというだけの問題ではなくて、昔の大事なものに立ち返る。たとえば『ノートルダムのせむし男』、『オペラ座の怪人』、エドガー・ライス・バローズの火星ものシリーズ、それから恐竜、なんていうものに帰っていく。そういうルーツは忘れたことがない。それがなかったら、ほとんど書けなかったと思う。『白鯨』の映画化に参加できたのも、ずっと恐竜が好きだったおかげだな。恐竜が灯台に恋するという話があるだろう。「霧笛」という短篇。あれを読んだジョン・ヒューストン監督が、この作者を起用しようと思いついたらしいんだが、あの恐竜の話にメルヴィルの霊を見たんだと、あとで聞かされたよ。
「ナンシー関」本も紹介、が、品切れ。入荷したら改めて。
【芸能】 アカヘル
■ デイヴィッド・リンチ 草坂虹恵 訳
『大きな魚をつかまえよう リンチ流アート・ライフ∞瞑想レッスン』 四月社発行 木魂社発売 1800円+税
映画監督『エレファントマン』など。美術家、音楽家。本書は、リンチ流発想法を公開。ヨガの瞑想によってアイデアを得る。
訳者あとがきより。
『エレファントマン』で華々しい成功を手に入れ、『デューン 砂の惑星』で大失敗。辛酸を嘗め、これから手堅い作品を作るんだろうと思っていたら、なんと暴力とセックスにまみれたシュールな世界を一大展開(『ブルーベルベット』『ワイルド・アット・ハート』)。さらに、主人公を別人に変身させたり(『ロスト・ハイウェイ』)、シンプルな物語で素朴な感動を謳ってみたり(『ストレート・ストーリー』)――。……
思い返せば、われわれは映画以上に、リンチの頭の中を楽しんでいるのかもしれない。……
(平野)