週刊 奥の院 5.30

■ 宮田珠己 『はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある  墨瓦蠟泥加書誌(ブックスメガラニカ)』 本の雑誌社 1600円+税 
 兵庫県出身。これまでの著書はほとんどが旅行記。本書は、「人文書を中心に、エキゾチックな興味を満足させてくれる本を素人目線で紹介」。『本の雑誌』連載(08.3月号〜12.2月号)。カバーイラスト、著者。ブックデザイン、金子哲郎。
 書名副題にある「メガラニカ」とは、南半球に実在すると信じられていた巨大大陸。17世紀初頭、マテオ・リッチ坤輿万国全図』に描かれた。オーストラリアや南極大陸と言えないこともなく、「あったようななかったような大陸」。
 

 このマガラニカにならい、幻想であれ史実であれ、そんな世界があったのか、とエキゾチックな嗜好を満たしてくれる本を、個人的にメガラニカ本とジャンルづけることにした。……
 わざわざ言うまでもないとは思うが、同じ大陸でもムーとは違うことは、念のために断っておきたい。ムーが多くの信者とともに超自然方面へ飛んでいくのに対し、メガラニカは、かっこよく言えば、地理学や歴史学民族学、あるいは民俗学博物学、さらに文化人類学などの周辺をうろうろするのである。といっても、あくまで周辺をうろうろするだけなので、学術的に突っ込んだ話が出てくるわけではない。難しい話は苦手だ。
 それよりも、はるか南の彼方の幻の大陸を旅するような、そのとき目に飛び込んできたふしぎな景色に驚くような、そんな気分で書いていった。……

中野美代子の奇妙な図像たち 『奇景の図像学』(角川春樹事務所)
ジパングは日本じゃなかった!?  的場節子『ジパングと日本 日欧の遭遇』(吉川弘文館
自殺のような旅行のような補陀落渡海の謎  根井浄『観音浄土に船出した人びと』(吉川弘文館
木に子羊がなるって本当?  ベルトルト・ラウファー、ヘンリー・リー『スキタイの子羊』(博品社)
……
 アボリジニ東海道かくれキリシタン八犬伝、アフリカ、夜這い、ナチ、狂喜、春画、地獄、炭鉱……全44冊、プラス「紹介しきれなかったメガラニカ、ベスト10」。
(平野)
◇ ヨソサマのイベント
■ 林哲夫作品展 パリの書店を描く 6.16(土)〜27(水) ギャラリー島田

http://www.gallery-shimada.com/schedule/exhibition/hayashi_1206.html