週刊 奥の院 5.24
本日も河出書房新社の本2点。
■ 『深沢七郎 没後25年 ちょっと一服、冥土の道草』 道の手帖 1600円+税
対談 町田康 朝吹真理子 「深沢七郎に反響する音」
矢崎泰久 新海均 「超人は永遠を生きる」
深沢七郎 未収録作品 インタビュー「夢と漂泊、私の70年」 エッセイ「夢屋往来」「粘土節のおたかやん」 対談 武田泰淳「あなたにとっての“今川焼”」
保坂和志、中原昌也、藤枝静男、尾辻克彦、天沢退二郎、横尾忠則、金井美恵子……、エッセイ、論考。
武田との対談は『文藝春秋』(1972年5月号)
(武)おや、ギターを持ってきたの? ギター入り対談なんて、はじめてだな。(笑)
(深)ギターでもあると話ができるんじゃないかと思いまして……。武田先生(武田氏は深沢氏が中央公論新人賞に『楢山節考』を応募したときの選考委員である)と改まって対談するのは、はじめてですからね。
(武)そう、はじめてです。そのギター、日本製?
(深)そうです。ボロギターですよ。(ギターを弾きはじめる)これは『紡ぎ唄』っていう、日本のクラシックですね、小栗孝之っていう人の作曲です。
(武)百姓やって、ギターの腕は衰えませんか。
(深)衰えましたですね。
(武)やっぱり両方はうまくいかないんだな。
(深)(ギターを置いて)それに、齢をとると、ギターの音まで何となく宗教的になってきたみたいです。
(武)『楢山節考』からして宗教的だものな。あれはまったく宗教的だよ。だからお年寄が『楢山節考』を読むと……。
(深)いやになっちゃうらしいですね。
(……年寄の話に……
深沢が言うには、当時から十年ほど前、札幌に年寄専用のキャバレーがあって、ホステスさんがみな白髪のおばあさんで、お客はおじいさんばかり。それでも満員)
(深)……おじいさんたちがふつうのバーに行くと、白髪やハゲ頭を撫でられて、金をとってやれというような待遇しかうけないわけですよね。ところが“おばあさんキャバレー”に行くと、とても丁寧にされる。おばあさんのほうも、未亡人だとか何だとか、みんな何となく淋しさがあるからつとめているわけですからね。……
「今川焼」の話、見失った。
■ 『ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。』 14歳の世渡り術 1200円+税
学者、作家、僧侶、ジャーナリスト、芸術家……、30人が1人1冊、厳選して紹介。
(帯) 定番だけじゃ人生つまらなくない?
角田光代 森に分け入る 佐野洋子著『問題があります』
自らの読書体験を綴り……、
十代の人に勧めたい一冊なんて、本当は、ない。人から勧められずに、自分自身で本の森に分け入ってさがしてほしい。
と終わりたいところだけれど……
(そう書きながら、佐野の本を挙げる)
……読みにくいことはまったくない。この爽快さ、自由さ、心意気、今はわからなくても、年齢を重ねていくとどんどん輝きを増すだろう。それで思うはずだ。本も私といっしょに年をとってくれるんだなあ、と。「本に近づくなよ」という、魅惑的なエッセイもある。
山崎ナオコーラ 恋愛はしなくてもかまわない 『肉体の悪魔』
野中柊 生きる、生き生きと! 『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』
森絵都 世界一タフな男 『冒険者カストロ』
恩田陸 『虚無の供物』 中井英夫・その人々に『虚無への供物』
他
元ジュンク堂新宿店 樽井さん 「閉店作業を終えて」
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memorensai_23.html
◇ 【海】のブックカバー 「古書波止場」のやまだ書店さんから寄贈いただいたカバー。
同じ絵柄のA5版が当店にある。これはB6版。紙質もちがう。B6版には、背中に当たる部分に白抜きの個所があり、書名を書ける。所有者が書いているのは『部落からの告発』。検索すると、
「大阪部落解放研究所編 亜紀書房発行 1970年刊」
所有者はカバーの外側に透明ビニールをかけているが、やまださんによると、元の本に付いていたものを外側にしたものらしい。
歴代のカバーは「本屋漂流記」を。
http://www.mizunowa.com/soushin/omeme_file/omeme_bn10-12.html
(平野)