週刊 奥の院 5.11

■ 宮崎学 『ヤクザに弁当売ったら犯罪か?』 ちくま新書 720円+税
(まえがき)より。
 2009年12月、福岡のデパートが暴力団の事始め式用に弁当数百個を販売した。県警は取引をやめるよう注意。 
「事業者は暴力団活動を助長し、また暴力団の運営に資することになる利益を供与してはならない」
 事始め式の弁当はこれに該当する可能性がある。デパートは販売後に県警に違法性があるかどうか相談した。県条例施行前であったが、注意があった。条例が施行された現在なら処罰される。
 弁当の豪華さ(代金1万円)、数の多さ、事始め式という儀式から、一般市民は「注意」を妥当とするかもしれない。

……しかしである――。これが一個五百円のホカ弁を事務所詰めの若い衆が買いに来たケースだと、どうなるのだろう? 私などは考えること自体がバカバカしいと思うのだが、いまや全国の自治体で施行された暴力団排除条例によって、各商店事業者たちはマジメにこうしたケースに悩んでいるのです。……迷ったら警察に相談してくださいというのが警察の基本姿勢である。警視庁ホームページには「暴力団員に対しておにぎりや清涼飲料水等の日常生活に必要な物品を販売する」のは条例違反にならないと、ご丁寧にお許しが出ている。
 毎日の商売を行ううえで、これは違反かどうか警察にお伺いを立てなければいけないということは、極めて異常なことではないか。……

目次
1 暴力団排除条例とは?
2 暴力団排除体制の成立まで
3 自由な社会と暴力団排除
4 暴力団排除の反作用
5 改正暴対法と排除社会

 問題は、何をしたら罪になるのかがはっきりと示されていないこと。
 出版界では、「実話雑誌」は厳しくなるのでしょう。でも、【海】でその系統を買う人は、「ヤ」好きと「警」関係者です。古い「ヤクザ映画」のレンタルはどうなんでしょう? やっぱりお伺いしないといけないのか? 
 私の住まいする地域は、寂れているとはいえ商業地区。市場があり、小さな商売屋が並ぶ。引退した親分が住んでいる。私は毎日その屋敷前を通っている。商売屋の人たちは、そう深刻に考えていないだろうとは思う。
(平野)