月曜朝礼 新刊案内

【文芸】 クマキ
■ 早稲田文学 記録増刊  震災とフィクションの“距離”』 早稲田文学 1800円+税
 2011年3月13日、「早稲田文学」サイト上で、15人の小説家が執筆。期間限定で著作権を解除し、転送自由のチャリティ作品として発表。著書サイン本販売やオークションを行い、寄付を呼びかけた。

 本書は発表された16作品を収録し、英・中・韓3カ国語バージョンも。さらに対談・座談も掲載。限定1000部。
ATOKATA NO ATO  篠山紀信 泥土とスコップ  市川真人
プーラが戻る  古川日出男
RIDE ON TIME  阿部和重
Silver point  円城塔
この世の、ほとんどすべてのことを  福永信
芳川泰久青木淳悟、松田青子、村田沙耶香中村文則、木下古栗、中森明夫、牧田真有子、川上美映子、鹿島田真希重松清

 

 本書に収められた作品(と、あわせて収めた数本のエッセイや評論そして対話)の書き手たちは、被災した土地を訪れて泥土を掬おうと声をかければ、躊躇なく同行してくれただろう。実際、最初はそんなふうに考えていたのだ。けれども、私たちの前に広がる荒涼は現実のそれと同じように、想像力と言葉にも訪れていた。そう感じなかったひとも、もちろんいるだろう。ただ、少なくともあの日ぼくの前には、津波で見渡す限りの更地となった眼前の光景と、想像力と言葉のそれとが、まるで重なって見えたのだ。
 荒涼を掘り返すことは、目の前の泥土を掘り返すことに劣らず必要だった。結果として彼ら彼女たちは、「崇高な虚無」としての現実に、昨日までよりはるかに心細く見えたかもしれぬ道具で――なにしろ、あの土地を訪れた一年後のいま、ようやくその記憶をここに記すことですら、躊躇と頼りなさに満ちずにはいないのだ――ひと掬いずつ挑むようにして、作品に向かったに違いない。……(市川真人

■ 細見和之 山田兼士 『対論 この詩集を読め 2008〜2011』 澪標 1500円+税
 詩誌『びーぐる――詩の海へ』連載。細見は詩人でドイツ思想研究。山田も詩人、フランス近代詩研究。

 とりあげる詩集は、杉山平一『希望』、北川透『海の古文書』、和合亮一『詩の礫』、朝吹亮二『まばゆいばかりの』、中島みゆき『真夜中の動物園』、辺見庸『生首』、……入沢康夫荒川洋治長田弘谷川俊太郎 他
 事前の取り決めはなし、緊張感をもって対談。 
(細見)ある程度暗黙の了解。率直であること。対論者だけでうなずき合っているような禅問答のたぐいのやりとりはしない。できるだけ詩の間口を広げたい。「詩壇」で採り上げられないものを対象にしたい。 
(山田)何が出て来るのか分からないスリリングさ。必ずしも自分が読み込んでいるとは言えない詩集を精読し、併せて、同じ作者の他の作品をできるかぎり網羅的に読むという行為のスリリングさ。相手がどの角度からどんな球を投げて来るのかを見極めて打ち返す(空振りする)ことのスリリングさ。……
和合『詩の礫』。

(山田)和合さんは3月の16日にツイッターを始めた。僕は早速フォローしました。最初のところからリアルタイムで見ていた。
(細見)僕は詩がドキュメンタリーであってもいいと思うし、リアルタイムであってもいいと思う。ああいった大きい震災の只中で何が書かれうるか。一種の実験です。それは詩の大事な機能の一つで、それが大きい反響を呼んでいるというのもいいことだと思います。
(山田)問題は作品としての評価。やっていること自体を否定も批判もしないし、非常に勇気あることだし、実験精神も評価できる。もともと和合さんは実験精神が旺盛な人です。……

【芸能】 アカヘル
■ 木村充揮自伝  憂歌団のぼく、いまのぼく』 K&Bパブリッシング 2667円+税
“天使のダミ声”
付録に山下洋輔と共演した『ケセラ  CHE SARA』DVD。
1 最強のアマチュア・バンド〜天王寺から銀閣寺道へ
2 日本語でブルースを
3 シカゴのダウンタウンはまるで天王寺だった
4 ブルース!
5 ぼちぼちやらせてもらってます
6 空はともだち
7 言葉でなくて、気持を

(平野)