週刊 奥の院 4.26

■ 伊藤整 『近代日本の文学史』 夏葉社 2200円+税 
(帯) 明治から昭和33年までの文学者たちの群像史。
躍動する日本文学を描いた伊藤整の名著、50年ぶりに復刊。
 巻末エッセイ 荒川洋治
 
夏葉社がまたも埋もれていた名著を発掘。
 初刊は1958年光文社のカッパブックス。 
 本書は『伊藤整全集第21巻』(新潮社、1973年)を底本に使用し、初刊本を適宜参照。
「第一章 明治以前の社会と文学 鎖国時代の文学……」から「第十六章 戦後初期の文学 ……新進作家の登場」まで、約100年の日本文学史をまとめる。全427ページ。
「明治編」にあたる部分は、海外向け英文雑誌に書いたものが基。また、当時『日本文壇史』(講談社、1953−73年)を執筆中だった。
荒川洋治による。
(「文壇史」の)要約でありながら「新たな表現」「柔らかなユーモア」で、文学史の奥深さや文学の流れを理解できるよう配慮がなされている。「大正・昭和編」では、詩歌、戯曲についても必要十分な記述で、多くの書き手が登場したことがわかるようになっている。

今日の読者は、少数の作家の作品だけに関心をもち、みずからの読書をまずしいものにする傾向がある。文学史は、歴史に現れた群像を描き、作品や書いた人の生き方を見ていくもの。現在書かれている文学がどういうものであるかも、そこで明らかになる。
文学の核心は、文学の歴史だ。

第十六章の「太宰治の死」から。

……太宰治が昭和二十三年に死んだことは、戦後の日本文学のあり方を語る一つの事件であった。十年間つづいた戦争、その間の侵略主義を是認するための反近代的な逆行思想の押しつけから解放されたとき、日本人は歴史上はじめて自分たちが外国人の支配下にあることを見いだした。さらに人生についての倫理的判断の大きな転換、しかも一方では、住宅、食糧、衣料などの不足、急速に拡大して行くインフレーションの不安が人びとを脅かしつづけていた。これらの事情は、人間の最も醜悪で残忍な執着を露出させる結果になり、精神的な美しさをすべて磨り減らすごときものであった。この大きな生の不安に人間性を対置させ、そこから生まれる傷、その痛みの中で真実と美とを追求することに絶望的な努力をした、代表的な作家が太宰治であった。しかも彼はこれを私小説系の、私生活の急所と小説のモチーフを合致させるという方法でおこなっていた。
(左翼活動、心中事件、自殺未遂、薬中毒、結婚、創作活動、世間の注目、複雑な女性関係……心中死)
太宰治におけるこのような衝動は、当時の多くの日本人の心内に多かれ少なかれ存在していた。……

◇ 月末水曜日、2階ゴット朝礼  
海の絵本。
■ 石橋真樹子 『フェリーターミナルのいちにち』 福音館書店 かがくのとも絵本 900円+税
 最終便が出るまでのフェリーターミナルのいちにち。

■ 『海賊学 ウィリアム・ラバーの航海日誌』 今人舎 3400円+税 2007年刊
 2006年、ニューファンドランド沖で引き上げられた難破船から発見された航海日誌。
 

出くわす者すべてを命の危険に晒す、不道徳で極めて荒っぽい女海賊アラベア・ドラモンドを捉えるという任務により、本日出発する。
ウィリアム・ラバー船長 1723年9月13日

NR出版会HPの「書店員の仕事」(14)は東京都文京区の「あゆみBOOKS小石川店」久禮(くれ)さん「待場の本屋であるのだから」
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memorensai_22.html
◇ 全国ふるさと本ブックフェア(10)
◆ 京都新聞社 http://www.kyoto-pd.co.jp/pub/
【出品書目】
湖国のモダン建築 1400円+税  新選組見聞録 1333円+税
京都の地名を歩く 1333円+税  京の社寺を歩く 1200円+税
幕末・維新 彩色の京都 1200円+税  京都市電物語 復刻版 1600円+税
平安京と王朝びと 1800円+税  京の八百歳 冷泉家歌ごよみ 1500円+税
折々の京ことば 1200円+税  薫る公家文化 2286円+税
古典籍へようこそ 1500円+税  近江古代史への招待 1600円+税
中村武生と歩く洛中洛外 1400円+税  御土居堀ものがたり 1400円+税
ようわかるぜよ坂本龍馬 952円+税  第7回京都検定 問題と解説 1143円+税
京都検定 日めくりドリル500問 952円+税  京のおばんざい12ヵ月 1359円+税
京都ゆるり日本茶カフェ 1200円+税  京のおまわり 1400円+税
ぐるっとびわ湖 自転車の旅 1200円+税  ぐるっとびわ湖 巡礼の旅 1600円+税
菓子ひなみ 1400円+税  梅小路蒸気機関車館 952円+税
京発見! ミュージアムへ行こう 476円+税  京都うた紀行 1600円+税
ウォーキング京都 1429円+税  美を伝える 1800円+税
名誉園長の植物園おもしろガイド 1400円+税

「おまわり」 ご飯のまわりに並ぶおかず。
「菓子ひなみ」は、暮らしの営みにあわせた和菓子暦。
(平野)