週刊 奥の院 4.15

■ 大竹聡 『愛と追憶のレモンサワー』 扶桑社 1400円+税 
「酒とつまみ」代表。 
(帯) 酒エッセイの名手 待望の処女小説
重松清の推薦文 親父と息子のしみったれた感情が、胸に染みて、酔って、泣けて……。

 いつもの抱腹絶倒のエッセイとは違うよう。
 ガード下の酒場。中年男がグダグダと隣り合った男に話し始める。

……アタシはね、ときどき思うんですよ。酒飲んでるときになにを考えているのかなって。あ、こんなことお話してもいいですか? 構わねえって? さすが、下町の酒場へ来る人は懐が深いや。でね、なにを考えているかってことなんですがね。それはもうあれやこれやです。(たいしたことは考えない。駅の西口と東口の階段の段数は一緒かとか、ここの鶏皮はひと串に何切れかとか……)
 でもねえ、この年になると、あれやっときゃよかった、これをやっときゃよかったって思うばかりでね。先日もジローってヤツがね、あ、いや、これは古い知り合いでしてね、年恰好もアタシと同じくらいの男なんですが、ふーっと深い溜息つきながら言うんですよ。あれ、別の話になっちゃったな。これもアタシの癖でしてね。脈絡ってものがない。え? いい? お話しても? ……

 レモンサワーのお変わりをして、そのジロー――フリーライター歴17年――のことを詳しく詳しくしみじみと語る。
 装幀 井上則人  イラスト 庄司さやか 
 
(平野)
 「全国書店新聞 4.15 」 
 http://www.shoten.co.jp/nisho/bookstore/shinbun/news.asp?news=2012/04/15
 「うみふみ書店日記」も。