週刊 奥の院 4.12

 新しい出版社です。ぷねうま舎。記念の最初の本。
■ 伊藤比呂美 訳著 『たどたどしく声に出して読む 歎異抄 1600円+税
装幀 菊池信義
目次
ゼロから始める歎異抄
 1 たどたどしく読む歎異抄  
歎異抄 前
 2 旅
歎異抄 後
 3 旅
和讃 ひかりのうた
 4 旅
親鸞書簡 前
 5 旅
親鸞書簡 後
 6 旅
和讃 かなしみのうた
 7 旅
恵信尼書簡
 8 旅
和讃 母や子のうた
 9 旅
正信念仏偈〈むげんのひかり〉さま
10 旅
和讃 うみのうた
11 旅

 書名になった文章から。
 詩人は84年から熊本在住。97年からはカリフォルニアを拠点にし、熊本と往復生活。アメリカ国内も旅する。
 

 つらい。とてもつらい。運転もつらいが飛行機もつらい。……飛行機のなかで、あるいは空港のすみで、野垂れ死ぬかもと思いながら旅をつづけた。……
(死ぬことをぼんやり考えているが、死にたくない。飛行機に乗るたびに、「今度こそ落ちたって……」と思うけれども、いざとなったら怖くてたまらないだろう。親鸞の言葉を思い出す)
親鸞もこの不審ありつるに、唯円房おなじこゝろにてありけり……浄土へいそぎまいりたきこゝろのなくて、いさゝか所労のこともあれば、死なんずるやらんとこゝろぼそくおぼゆることも、煩悩の所為なり」
 これを自分のことばに置き換えてみたいと思った。それには書きうつさなくてはならない。そういうきまりにしてある。ことばを置き換えるためには、全身でそれを書きうつさねばひとさまのことばが身体中に入ってこない。しかしこの作業はかったるい。ひどくかったるくて、なかなかすすまない。……
(カナしか読めないお嬢さん・あい子さんに読ませて書き取る)
……「ふしぎに、たすけ、ま、うー、らせて」「漢字、人、なほ、もて、漢字、生きる」……一字読んではつっかえ、一字読んでは考え、している。……
(逃げ出そうとするあい子さんをだましてすかして読みつづけさせ、数頁分書きうつす)
……あい子がいいかげんな読み方をするので、読み終えるやわたしも声に出して読んで確認していかねばならない。のろのろとよむ幼い声に、確としただみ声がかぶさる。かぶさって、また離れる。あい子の声には意味がついてこない。わたしの声には意味がついてくる。……あい子の声に出す「ふしぎ」と、あい子の声に出す「すかされまひらせて」が、妙に心にしみいった。

 ぷねうま舎岩波書店OBが設立。「ぷねうま」とはギリシア語で、風、呼吸、命の息吹という意味だとか。
http://www.pneumasha.com/
(平野)
◇ 三浦しおんさん、本屋大賞、おめでとうございます。事務局の皆さん、選考参加の書店員の皆さん、ごくろうさまです。
http://www.webdoku.jp/tsushin/2012/04/10/192931.html

◇ 荒蝦夷・土方代表 「神戸新聞」4.10「心寄せて 東日本大震災」に登場。
「被災地を支えているのはメディア好みの『絆』なんて言葉じゃない。昔っからある『義理と人情』」