週刊 奥の院 3.29

■ 伊良子 序(いらこ はじめ) 『昭和の女優 今も愛され続ける美神たち』 PHP研究所 1700円+税 
 原節子田中絹代京マチ子淡島千景岸惠子浅丘ルリ子、岩下志摩、吉永小百合倍賞千恵子
そして、香川京子インタビュー。「みなそれぞれに厳しく、やさしく、そして映画への情熱にあふれていた」。
 女優たちの魅力とその人生。

「昭和は遠くなりにけり」。近ごろ、そんな声をよく聞くようになった。
 これからは平成生まれの人たちが社会の中心を担う次代になってゆく。不透明、混迷、指針なき時代。まったく見通しのきかない社会で、みんなが不安をつのらせている。……
「昭和」はそんな時代ではなかった。……世界大恐慌に始まって、長いオ戦争を経験し、そして全土が焦土になった敗戦。そこから戦後復興、高度成長へとままぐるしく世の中が変わった。(昭和元禄、バブル……)見果てぬ夢を見ては、つまずく。「昭和」そのくり返しだった。

 映画が最高の娯楽だった時代。
「映画が教科書だった」(淀川長治 

 銀幕に没入した観客は、巨匠や名匠がスターに託したメッセージに素直に共感し、明日への指標にした。映画は圧倒的な影響力を持つメディアだった。
(スター女優たち)名作で彼女らが演じたヒロインは、いま日本人が失いそうになっているものを持っている。やさしさ、たくましさ、ひたむきさ、健気さ、強さ、そして美しさ。
 その代表作を中心に、彼女らが演じた役と女優人生をたどれば「昭和」がいきいきと再現されるようだ。そして、混迷から抜け出すヒントを与えてくれるような気がする。

 著者は、元神戸新聞記者。96年から「神戸100年映画祭」総合プロデューサー。
(平野) 私の年代はカバー下段の4人でしょう。