週刊 奥の院 3.27

■ 都築響一 『東京右半分』 筑摩書房 6000円+税
 カバージャケット、妖しい……、よく見れば人形=ラブドール

(帯)

2012年、東京右傾化宣言!
ふんどしパブに女装図書館、パンダ剥製に地元プロレスに、昭和のキャバレーに健康ランドに極道ジャージにラブドール……
85の物語と108のキャラクターでつづる、右曲がりの東京見聞録!

 浅草・褌スナック、浅草・梵字バー、雷門・女装子(じょそこ)ライブハウス、東上野・仏具商店街のギャラリー。他に民謡酒場、演歌の聖地、ダンスホールモボ・モガ御用達アンティーク、変身アトリエ、リトルバンコク……。
 東京右半分に得体の知れないエネルギーが集まっているらしい。

古き良き下町情緒なんか興味はない。
老舗の居酒屋も、鉢植えの並ぶ路地も、どうでもいい。
気になるのは50年前じゃなく、いま生まれつつあるものだ。
都心に隣接しながら、東京の右半分は家賃も物価も、ひと昔前の野暮ったいイメージのまま、
左半分に比べて、ずいぶん安く抑えられている。……
獣が居心地のいい巣を求めるように、
カネのない、でもおもしろいことをやりたい人間は、
本能的にそういう場所を見つけ出す。
現在進行形の東京は、
六本木ヒルズにも表参道にも銀座にもありはしない。
この都市のクリエイティブなパワー・バランスが、
いま確実に東、つまり右半分に移動しつつあることを、
君はもう知っているか。

 千住・昭和気分キャバレー、湯島・手話ラウンジ、湯島・陰間茶屋、上野・ピンク映画館、南小岩・湯宴ランド……。
本関連では、墨田区千歳・マンションの一室にある私設図書館、台東区鳥越・女装図書館、そして、新宿揚場町の会員制風俗資料館。
忘れてはいけない、カバーの人形、上野オリエント工業
(平野)