月曜朝礼 新刊案内

【文芸】 クマキ
■  『古井由吉自撰作品』全8巻 河出書房新社 
第1巻 「杳子・妻隠/行隠れ/聖」
 刊行記念特別定価 2600円+税(2012年9月末日まで。以後3600円+税)
解説 朝吹真理子  装幀 菊地信義  月報に書き下ろし「半自叙伝」
全巻予約読者特典 著者自筆サイン色紙贈呈(締め切り2012年4月末日)
 
 古井は1937年東京都荏原区平塚(現・品川区)生まれ。62年東大大学院修士修了、ドイツ文学。金沢大学、立教大学勤務。翻訳の他、68年1月処女作「白猫」発表。71年「杳子」芥川賞。77年、後藤明生坂上弘高井有一らと同人誌「文体」創刊。「内向の世代」。
「発刊の辞」より。 

 この道に迷いこんで四十年あまりになり、作品集を発刊する幸運に恵まれた。若い頃の作品は遠くなり、七十代のなかば、これからまだどんな作品がしぼられてくるか知れない。ひきつづき途上にある。こんな長旅になるとは思わなかった。それでもときおり、いまもたどたどしく言葉を綴る自分が、三十代四十代の自分と、そのまま重なることがある。とぼしさのほうへ付いた一作家、ここにおさめられるすべての作品を、現在のものとして、差し出します。

 各巻の解説者で、現代日本文学への影響力がわかる。
朝吹の他、平野啓一郎角田光代佐々木中保坂和志堀江敏幸島田雅彦町田康
パンフレットにある推薦者、柄谷行人蓮實重彦高橋源一郎吉増剛造黒井千次……。
【担当】この人の本を読んでいるだけで、自分の周りの世界でカッコよかった時代があった。

【文庫】 平野撰
■ 谷川俊太郎 編 『祝魂歌』 朝日文庫 600円+税
伊藤比呂美 解説  03年ミッド・ナイト・プレス刊。
 詩をめぐる30の詩。
(今日は死ぬのにもってこいの日だ) プエブロ族の古老
電車の窓の外は  高見順
兵士の世代  石垣りん
初めての児に  吉野弘 
……
「また来ん春……」 中原中也
また来ん春と人は云ふ  しかし私は辛いのだ  
春が来たつて何になろ  あの子が返つて来るじやない 
……
■ 井上理津子 『旅情酒場をゆく』 ちくま文庫 840円+税
『最後の色町 飛田』(筑摩書房)の著者。
“酒飲みニッポン列島 旅から旅へ!”
 神戸は、新開地「正宗屋」訪問。案内者はライター&シンガーソングライターの中村よお
「町の匂いを感じながら歩くと、その町の匂いを煮詰めたような店が、なぜか見つかる。」












■ 滝田ゆう なぎら健壱 編
泥鰌庵閑話(どぜうあんつれづればなし)傑作選』 ちくま文庫
 950円+税
 

 滝田さんは放浪の画家である。いや待てよ、放浪の画家と言えば、ランニング姿の画伯のことになってしまう。ならば放蕩の画家というのはどうだろう? はたまた徘徊の画家か? しかし滝田さん、よくもまあ飽くこともなく、毎晩のように飲んでいたもんだと感心する。しかも梯子酒である。それが『泥鰌庵閑話』の中に架空の世界ではなく、事実を表白としている。私小説ならぬ私漫画とでも言おうか。……













■ 植島啓司 『突然のキス  恋愛で読み解く日本文学』 ちくま文庫 840円+税
 宗教人類学者が、文庫で読める日本の短編小説から、「ふと読み飛ばしてしまいそうなあまり気がつかない男女のあいだの謎をめぐって、あれこれ推測し思わぬ謎解きを見せたい」と、恋愛小説の主人公たちの振る舞いを解明する。
鏡花、芥川、太宰、川端、谷崎、吉行、三島から、村上龍中上健次川上弘美金原ひとみ京極夏彦まで。
 著者の経験。
 30年ほど前、先輩教授(女性、30歳くらい年上)の送別会が終わって出口に向かって皆歩き出す。最後尾にいた著者、
「すぐ前を歩く彼女を振り向かせると、思わずそのままキスしてしまったのだ。いたずら心からだったのだが、意外なことに、それはこれまでに経験したことがないほど甘美なキスだったのである」 
 各章の冒頭で語られる著者の経験談、うらやましくもあり。
 ほんまかー? あなたが謎!

(平野)11日、郄田郁さん、新刊『夏天の虹』(ハルキ文庫、3.15発売)にサインのためご来店。ありがとうございます。サイン本は後日公開いたします。