週刊 奥の院 2.27

■ 野口武彦 『勝海舟の腹芸  明治めちゃくちゃ物語』 新潮新書 740円+税 
週刊新潮』連載「幕末バトル・ロワイヤルは明治に移る。
「今度は誰が生まれたての明治国家を切り回すかをめぐって激しい権力争奪のドラマが始まる」
「なりふり構わぬ権力闘争という点では幕末と明治はみごとに連続しているのである。昨日までの同志は今や政敵に変わった。弱肉強食の時代が訪れた」
第1部  明治回天録  明治のメはめちゃくちゃのメ 江戸湾の海賊 討薩の表 鳥羽街道の開戦 伏見奉行所の攻防 慶喜逃亡 神戸事件 堺事件 明治天皇の国際デビュー 赤報隊始末 五箇条の御誓文 トコトンヤレナ 廃仏毀釈 近藤勇斬首 他
第2部  明治滅法録  歴史の回り舞台 小栗上野斬首 会津藩追討 官軍は官賊なり 奥羽列藩同盟 上野彰義隊玉砕 徳川家処分 会津落城 水戸藩血風録 蝦夷共和国 江戸奠都(てんと) 土方歳三の最期 明治維新の収支決算 他

 著者は、明治初年の混沌を3点に要約する。
(1) 権力者は等身大である(維新の功臣、明治の賊将)。
(2) 敵と味方は互換的である(昨日の友は今日の敵)。
(3) 支配と被支配は可逆的である(勝てば官軍)。
 

明治国家の創成期は、この等身大・互換性・可逆性がしだいに取り崩され、政治権力が特定の少数者に独占されてゆく過程である。明治十年までは、いわば《権力の本源的蓄積期》にあたっている。

 徳川処分、戊辰戦争廃藩置県秩禄処分廃刀令……、明治十年西南戦争、翌年大久保暗殺。
 で、「海舟の腹芸」とは?
 家来を捨てて逃げる将軍を抱えて、“江戸無血開城”だけでは終わらない。武装放棄、旗本・御家人の行く末など、海舟は敗戦処理に奮闘する。
(平野)