週刊 奥の院 2.9
■ 古沢和宏 『痕跡本のすすめ』 太田出版 1300円+税
犬山市の古書店「古書 五っ葉文庫」店主。
「痕跡本」という言葉、あなたは聞いたことがありますか?
それは、古本の中に、前の持ち主の「痕跡」が残された本のことです。
アンダーライン、感想など書き込み、メモ、レシートなど。傷や汚れ、ヤケも「痕跡」。署名とか蔵書印もそうでしょう。
書き込みなど、よほどの著名人のものでないかぎり古書としての価値は、ない!
でもね、著者は持ち主のその行為を想像することで、1冊の本に価値を見い出す。
……そこには前の持ち主がそれを買った理由があり、そして手放した経緯が存在する……。
そう、すべての古本には、前の持ち主がその本と過ごした時間という「物語」が刻まれているのです。
ホラーマンガに針の跡……、こわい!
外国語のテキストに書かれた夢? 希望? 「日本代表FW13」。
『人食い神話』という本に貼られているグラビアアイドルのシール。
……
痕跡目当てで買った本が読書の入口になる。
痕跡――誰かがその本とガチンコで向かい合ったことの証拠。
そこにあるのは嘘偽りのない証言。……
著者が見い出す、新しい“古本の価値”です。
本の楽しみというのは、ほんとうに間口が広くて奥が深い。
当ブログでも「書き込み」のこと紹介しました。
昨年5月、古本「ロシナンテ」出品の、永井荷風訳『珊瑚集』(第一書房、昭和13年) に書き込みがありました。
Y・S氏がTamamiさんの誕生日に贈った本です。「1938.9.6」の日付がありました。どんなドラマがあったのでしょう。
(平野)
8日は、テレビで紹介されたという、五木寛之『下山の思想』(幻冬舎新書)、なかむらるみ『おじさん図鑑』(小学館)の問い合わせ多数。
全国の本屋のみんな、ご苦労様でした。私が応対した方々は、どなたも書名覚えてはりませんでした。