週刊 奥の院 2.1

■ 大谷能生 『植草甚一の勉強 1967−1979全著作解題』 本の雑誌社 1600円+税 
(帯) 70年代生まれのミュージシャン・批評家と70年代最高のヒップスターの出会い

 そもそも、すべての著作物を読んでその解説を書こうという考えほど、植草甚一的なふるまいから遠いものもないだろう。……読むべきものが膨大なのははじめから分かっていたが、それがこれだけ体系を欠いた、実に感覚的な、どう切っても図式に還元することができない細部の集積だとは思っていなかったのである。……気に入らないものは頭から無視し、そのかわり、興味を持ったものには限度を超してのめり込むという、徹底的に自己本位を貫いた「夢中になったり飽きてしまったり」の身も蓋もない爽快さこそ、植草甚一の著作からぼくが第一に学んだことである。……


 晶文社WEB連載「植草甚一のいた時代 J・J氏と二十世紀の日本文化」 (2008.4〜09.4)をもとにした書き下ろし。
1 1967年、『ジャズの前衛と黒人たち』
2 『ぼくは散歩と雑学がすき』と彼の残したスクラップ・ブック
3 J・J氏の長い不在、『映画だけしか頭になかった』
4 ニューヨークという街、「それでも自分が見つかった」
5 「植草甚一スクラップ・ブック」シリーズ・オール・レヴュー
6 逝去までの四年間
7 余滴

 「本の雑誌」はシーナやサワノやメグロら創刊メンバーそれに若い書き手がたくさんいて面白くていつものように読むんだけど、読んでいるうちにウトウトしてはまたページをめくりだす。近頃ここの出す本は少し変わっていてふたむかしよりもっとずっと前の僕らが憧れていたいたカルチャーに目が向いているんだなあと思ってしまう。J・J風に。
 
(平野)