週刊 奥の院 1.21

 敬愛するYさんから見本をいただいて読みました。
■ 笹本稜平 『所轄魂』 徳間書店 1600円+税 
 警察小説。所轄の殺人事件捜査本部に警視庁キャリア管理官(まだ26歳)が着任。所轄の担当は実の父親。さらに、本庁の敏腕だが手柄に走る鬼係長が参加。
 次々発見される裸足の女性絞殺死体。捜査をめぐって所轄刑事と本庁の鬼刑事が絡み合う。息子は父親を助けたい、父は息子のキャリアに傷をつけたくない……。
 親子で刑事というのは、漫画やTVドラマではある。小説であるのかどうかは、私、存知ません。すみません、ほとんどこういうのは読んだことがないもので。
 エリート対現場の叩き上げ、父子の対立、頑固と若気のいたり、老刑事の執念、子が父を乗り越え成長とか、ありきたりのストーリーではありません。
父と同僚は事実をコツコツ積み上げて、冷静に慎重に捜査をし、息子は慌てず騒がず父たちを信頼しています。鬼刑事をどう制御して事件解決にいたるか。父は真犯人に迫っているが、容疑者は自白だけで鬼刑事の筋書きどおり送検されようとしている。
 

(父の上司・大原)「上に楯突こうというんじゃない。帳場を怖そうというつもりもない。しかし刑事という稼業には退くに退けない一線がある。それは本当の悪党を逃がさないこと、間違った罪を人に着せないことだ。このままじゃその二つの失策をいっぺんに犯すことになる。それじゃ、いくら組織に忠実でも刑事として失格だ」
(息子キャリア)「そうだよ、親父。大事なのは大原さんが言っていることで、それと比べたら帳場の体裁を保つことなんか些細なことだ。警察がそれができないほど硬直した官僚組織なら、なかからぶち壊してやるのもおれたちの仕事じゃないか」
(親父)「わかったよ。だったら見せてやろうじゃないか。所轄刑事の心意気を」
(息子)「ああ、ついでに新米管理官の意地もきっちりみせてやるさ」

 それでね、感想なんですが、この親子、ふたりとも人間ができ過ぎていて、私らグウタラ人間には、ちょっと理解が難しい。
(平野)
NR出版会の「新刊重版情報」の「書店員の仕事」に寄稿いたしました。すみません、私、3度目の登場です。NRさんに【海】のPRばっかりしてもらっています。くららさん、NR加盟社皆さんに感謝、花マル! 
 http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memorensai_19.html