週刊 奥の院 1.10

雑誌
■ 『大阪人』 3月号 (財)大阪市都市工学情報センター 648円+税
特集 司馬遼太郎は「大阪」をどう見ていたか。
 司馬遼太郎の大阪「名場面」を歩く  大坂城、幕末ヒーローの足跡、作品関連・ご近所マップ 他
 名越康文×西加奈子対談 「司馬遼太郎が歩いた風景をなぞる 街道、寺社、店、そして人……」
 時代別・司馬遼太郎クロニクル
 司馬遼太郎『大阪の原形――日本におけるもっとも市民的な都市』(昭和62年3月)

 私は、大阪にうまれた。
 以後、六十四年もこの街に住んでいる。
「よほど大阪が好きなんですね」
 とよくいわれるが、そうでもない。人間というのは、病的な自己愛のもちぬしでないかぎり、鏡の中の自分の顔や、テープに再現された自分の声を、冷静に見たり聴いたりすることができないはずである。つねに多量の、もしくは微量な嫌悪感がつきまとう。私の大阪への感情もそれに似ている。
……大阪が好きか、と問われれば、返事にこまるのである。私は自己に対して嫌悪感からまぬがれたことが一度もないため、
「きらいです」
 と、一応は答えざるをえない。ただし人間は、自己を真底きらいなままで、三日も生きていけない。私はすでに半世紀以上もこの街に住んでしまっている。街そのものが自分の皮膚のようになっていて、植物にたとえれば他の土壌への移植が利かないぐらいになっている。……

■ 新潮45』2月号 新潮社800円+税 
第三(?)特集 「本屋」は死なない
芳林堂がめざした「理想の書店」 石橋毅史
書店匿名座談会 「技術」と「工夫」でまだまだ活路はある!
 ミニエッセイ「私の好きな本屋」 中島京子川上弘美山本容子、華恵 他
「幸福な事故」を誘発する場所へ 幅允孝
 電子本はむしろ「かたい本」から 津野海太郎
 
■ 『g2』 vol.9 講談社 1143円+税  

毎回、力作揃いですが、個人的には、
菅原文太(78歳)老骨にムチ打つ覚悟を語る 佐野眞一
東北巡礼 赤坂憲雄
ルポ「風化」と「復興」 西岡研介 松本始 
 を推奨。
http://g2.kodansha.co.jp/

■ 『SAPIO』 2月1・8日合併号 小学館 524円+税 
原発を再稼動しないと日本は食っていけない」という“脅し”に我々が対抗できる唯一の武器 佐野眞一 

 なし崩し的に導入された原発が、なし崩し的に再稼動へ動き出そうとしている。なし崩し的であることに
NOと言いたい。しかし、ヒステリックにわめき散らすばかりでは、連中の思うツボ。今求められるのは「散文精神」である――。
……脅し文句に対抗する言葉を持つには、むやみに怒り・嘆き・悲しむことをせず、それでいて悲劇を忘れない強靭さが求められている。

(平野)